過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではポール・ワツラウィックと「洞察と盲目性」について書いていきたいと思います。
ポール・ワツラウィックについて
ポール・ワツラウィック(Paul Watzlawick)は1921年オーストリアのフィラハに生まれたオーストリア系アメリカ人の哲学者で、家族療法やコミュニケーション理論において著名な心理学者です。
高校卒業後にヴェネツィア大学で哲学を学び博士号を取得し、チューリッヒのカール・ユング研究所で分析心理学の学位を取得します。
ワツラウィックは著書「変化の原理」で、変化をもたらすための個人を超えた社会システムと家族療法のアプローチを提唱しています。
家族療法には、戦略派やミラノ派、精神力動派、多世代派、構造派、などの諸学派がありますが、ワツラウィックはドン・ジャクソンやリチャード・フィッシュ、ベイトソンらとともにコミュニケーション派の家族療法家とされています。
コミュニケーション派家族療法とは、家族の病理の発生をコミュニケーションや好ましくない交互作用パターンを問題としてみていきます。
著作「変化の言語」では右脳への治療に着目し、「人間コミュニケーションの語用論」ではダブルバインドの理論について提唱しています。
米国を代表する心理療法施設MRI(メンタル・リサーチ・インスティチュート)のブリーフセラピーセンターの創設メンバーの一人としても有名です。
ワツラウィックの「洞察と盲目性」
過去をふりかえったり、トラウマや過去に原因を求める思考を「洞察」と考えるならば、「洞察はときに盲目の原因となる」とワツラウィックは言います。
トラウマや原因がわかることで対処、解消することも確かに可能なのですが、その原因や心理の世界に囚われて、解決の道が見えなくなったり、その世界以外が見えなくなってしまったりすることがあります。
またその洞察によりかえって前よりも悪くなることもあるともワツラウィックは主張しています。
ユングの分析心理から始まっているので分析の良いところと良くない点を十分に理解されていたのかもしれません。
ワツラウィックは分析や洞察を巡らせる心理療法から次第に短期療法で有名なブリーフセラピーを支持するようになります。
特定の問題に的を絞り、その解決に実行して取り組むことで早期解決を目指す手法を重視し、患者をサポート・支援する関係性を提供することが重要だと訴えました。
※トラウマや原因にアプローチする精神分析的な心理療法もブリーフセラピーも長所と短所が有り、一概にどちらが良いという議論では本質に的を得ないものになります。しかし主張として一考できるものがあり、メリットとデメリットを知ることが大切です。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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