私たちはあまり意識して行っていないのですが、いつの間にか「妄想にふける」ということを無意識的におこなっていることがあります。

事実だと思っていることの中に自分が想像した推測や妄想が入り込み、いつの間にか事実になってしまうことがあります。

ここでは「妄想」と「被害妄想」の実態について明らかにし、カウンセリングの有用性について説明をしていきたいと思います。

妄想とは何か?


妄想は、辞書によると以下のような説明がされています。

 根拠もなくあれこれと想像すること。また、その想像。「妄想にふける」「愛されていないと妄想してひとりで苦しむ」
 仏語。とらわれの心によって、真実でないものを真実であると誤って考えること。また、その誤った考え。妄念。邪念。
 根拠のないありえない内容であるにもかかわらず確信をもち、事実や論理によって訂正することができない主観的な信念。現実検討能力の障害による精神病の症状として生じるが、気分障害や薬物中毒等でもみられる。内容により誇大妄想・被害妄想などがある。

デジタル大辞泉(小学館)

医学的(DSM:精神障害の診断と統計マニュアル)「妄想」の定義として以下のような特徴をさします。

・不正確な推論に基づく誤った信念 (belief)
・他の多くの人間が信じていること(文化や常識)に反する
・明白な根拠や反証(反対する証拠)があっても頑なに維持されるもの
・宗教的信条ではない
・極端な価値判断である
・優格観念(支配観念とも言う:特定の観念に囚われて離れられない)から推論される

このような情報を照らし合わせて「妄想(英語:delusion)」とは、多くの人間が信じていることに反する「不正確な推論に基づく根拠のない信念や価値判断」であり、反対する証拠を提示されても頑なに維持されたり、特定の観念に囚われて離れられないことから生まれるものであると言えます。

このように書くと「妄想」が非常に悪いように見えますが、「適応的な妄想」もあります。

「妄想」における適応的なメリットとしては以下のようなものがあります。

・想像力が豊かになる
・ロマンティックになる
・アーティスティックな能力が伸びる
・仕事のアイデアにつながる
・気持ちの切り替えができる
・嫌なことから離れられる
・ストレス解消になる
・精神が安定する
・可能性を引き上げる
・暇つぶしになる
・相手の気持ちを推測できる
・お客様の気持ちを推測できる

「妄想」における非適応的なデメリットとしては以下のようなものがあります。

・現実と妄想の区別がつかない
・勘違いが生まれる
・現実離れし過ぎてしまう
・思い込みが強くなってしまう
・現実に向き合えなくなる
・現実逃避グセがついてしまう
・偏った考え方に至りやすい
・客観視できなくなる
・被害妄想や被害者意識が強くなる

妄想には、日常生活にあまり支障がないレベルのものもあれば、日常生活や人生に大きな支障をきたす妄想もあります。

日常生活で支障がないレベルの妄想であれば、それに気づき、修正するのも容易である場合が多いものですが、自分の中核的な信念を修正しなければならないような「妄想」はそのように行うことができません。

外部から見て「それは妄想だ」と思っても、「それが正しい」と信じる本人にとって、それが妄想だと認識しづらい特徴があります。

妄想だと認識できたとしても許容できないこともあり、否認してしまうこともあります。

自分が信じているものが「それは妄想だ」と言われ、「はい、わかりました」という風に単純にいかないのです。

なぜなら自分の大切な信念体系を疑い、いくら正しくても「自分の信念の崩壊」につながるような情報を組み入れなければならないことがあるからです。

そういった容易ではない特徴があり、指摘は、当人にとって慎重に配慮されたものでなければなりません。

○知っておくと良い専門用語「二重見当識」
妄想世界と現実世界を並立させて、その双方を行き来することを「二重見当識」といいます。

妄想の種類


根拠をあまり持たない妄想を「一次妄想」、何かしらの根拠や経験と関わりがある妄想を「二次妄想」といいます。

一次妄想は、以下の5つに細分化されています。

妄想気分:天変地異の予感など、周囲を不気味なものに感じ、何か大変なことが起こりそうな気持ちになる妄想をいいます。

妄想知覚:偶然に意味づけするなど、正常な知覚に特別な意味づけが行われ、それが強固になり訂正が不可能な妄想です。

妄想表像:誇大なイメージを抱く妄想です。

妄想覚性:途方もないことを察知しますが、実体には何も理解できていない妄想です。

妄想着想:突飛な考えを思いつくなど、ある考えや古い記憶が突然思いがけない意味をもって思い出され、強固な確信に至る妄想です。

上記の分類とは別に妄想の種類を紹介します。

被害妄想・・・自分が被害を受けていると信じ込む妄想
関係妄想・・・人の言動や入ってくる情報が自分に関するものだと思い込む妄想
加害妄想・・・取り返しのつかないことをしたと信じ込む妄想
罪業妄想・・・自分は罪深い人間だと信じ込む妄想
迫害妄想・・・迫害されていると信じ込む妄想
物盗られ妄想・・・自分のものが盗られたと思い込む妄想
追跡妄想・・・他者からつけ狙われていると信じ込む妄想
注察妄想・・・自分を注視して見られていると信じ込む妄想
監視妄想・・・自分は何者かに監視されていると信じ込む妄想
被毒妄想・・・毒が入れられていると信じ込む妄想
家族否認妄想・・・自分の家族は本当の家族ではないと信じ込む妄想
嫉妬妄想・・・パートナーが浮気していると信じ込む妄想
誇大妄想・・・自分が大きなことができる、重要な人物であると信じ込む妄想
血統妄想・・・高貴な出生であると信じ込む妄想
発明妄想・・・大発明を行ったと信じ込む妄想
宗教妄想・・・救世主であると信じ込む妄想
憑依妄想・・・神や霊などが憑いていると信じ込む妄想
世界没落体験・・・世界が終わってしまうといった感覚に襲われる妄想
微小妄想・・・自分を実際より低く評価し、劣っていると思い込む妄想
虚無妄想・・・自分は皮と骨だけで中身は何もないと思い込む妄想
心気妄想・・・病気や身体的異常があると信じ込む妄想
自臭妄想・・・自分は臭いと現実より強く体臭があると思い込む妄想
醜形妄想 ・・・自分の身体が醜い(みにくい)と思い込む妄想
貧困妄想・・・事実に反して財産がないと信じ込む妄想
物理的被影響妄想・・・電磁波などで攻撃されていると信じ込む妄想
作為体験・・・何かさせられていると信じ込む妄想
考想吹入・・・頭に考えをいれられると信じ込む妄想
考想奪取・・・考えを奪われると信じ込む妄想
考想伝播・・・考えが周囲に伝わっているんじゃないかと信じ込む妄想
考想転移・・・人が考えていることがわかると信じ込む妄想
妄想性人物誤認・・・知っている人物が別人に取って代わられていると思い込むカプグラ症候群、周囲の人間は一人の人間が変装していると思い込むフレゴリ症候群、自分の分身がいると思い込む自己分身症候群などがあります。

妄想と病気の関係

妄想が発現する病気や疾患として

・統合失調症
・認知症
・せん妄
・脳疾患
・妄想性障害
・双極性障害
・うつ病
・妄想性パーソナリティ障害
・境界性パーソナリティ障害
・統合失調型パーソナリティ障害

などがあります。

病気と関係なく、睡眠不足や疲労困憊などにより幻覚や妄想が生じることもあります。

また覚醒剤や麻薬などによって妄想が強く生じることがあります。

※病気や疾患により妄想を治療や改善することが難しいものもあります。

妄想や被害妄想に対するカウンセリング


ある程度の妄想に囚われることは多くの方が経験したことがあるものだと思います。

特にそれは精神的ショックを受けた出来事の後によく現れます。

精神的ショックを受け、自分や人が信じられなくなり、「もしかしたらこうなんじゃないか?」「本当は〇〇なのではないか?」といったように推測や空想が生まれます。

そして「絶対そうだ」と認識するようになると、そういうこととして事実を再認識してしまいます。

このプロセスには、当人のショックな出来事から発生した「傷つき」が根底にあります。

この傷つきから自分の今までの感覚を信じられなくなったり、他人を信じられなくなってしまいます。

精神的ショックにより今まで信じてきた世界観が崩壊または破綻してしまったのです。

自分や他者を信じられなくなると警戒心が強くなり、過敏になり、疑い深くなります。

そのような感覚が強まり、「もう二度と同じようなことを起こしたくない」という欲求が重なると「推測」や「憶測」を行いたくなります。

そこに妄想が入り込んできます。

そこで事実を確認したり、関わった人間の本意を確認したりといった確認作業が行われ、事実が判明出来ると妄想は消滅することが多いものです。

しかしそのような確認作業ができず、推測の余地があると妄想は自由に肥大します。

当人に孤立や孤独などの状況がある場合、なおのことその妄想は激しくなります。

また傷つきを癒すことができない状態が続いたり、傷ついた理由を自分の責任にできない時、傷ついた理由を他者の責任に置きたい時にそれは強化される傾向があります。

人はあまりにつらい時にその責任の所在をどこかに置きたくなるものです。

そのように妄想などの推測が事実に入り込み、いつの間にか当人にとって事実として認識してしまいます。

事実として形成されたのちに誰かにその旨を話すと、多くの場合、理解されない経験をしてしまいます。

それは当人の認識を否定するような内容になってしまいます。

そのような理解されない否定されるような経験を繰り返すと、ますます人を信頼できなくなり、孤立・孤独状況が強まり、自分の認識をかえって強化していくことになります。

そして疑い深さ、警戒心、過敏性はより強調されてしまいます。

自分の認識に非を認めることは、このようなプロセスでたくさん傷ついた自分に対して再起不能になるような強烈なダメージを加えかねないのです。

たくさん傷つき、たくさんつらい思いをされてきたんです。

その気持ちに寄り添いながらクライエントのペースでゆっくりと時間をかけて見える世界が少しずつ変わっていくようなカウンセリングが理想かもしれません。

まれに妄想の中でもただの妄想ではなく、事実であることもあります。そういったところの確認作業も必要になる場合があります。(事実を確認できない場合もあります)

丁寧にひとつずつ大切にみていくことにより、どこからが妄想で、どこからが事実なのかの境界性が少しずつ見え始めます。

そして傷つきや苦しみが癒されていくような流れでカウンセリングを進めていきます。

「許せない」といった強い怒りや憎しみの感情が強く存在していることもあり、その気持ちの真意に迫っていきます。

そこにはクライエントの大切な信念や心情を打ち砕かれた「悲しみ」や「苦しみ」が詰まっていることがあります。

このカウンセリングの核心になるところです。

クライエントと協働してその核心に向き合っていきます。

そこから新たなスタートが始まります。

参考文献
妄想『ウィキペディア(Wikipedia)』
妄想 脳科学辞典
心理学用語集: 精神症状 心理学用語の学習


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