燃え尽き症候群・バーンアウトとは何か?どのような状況でなりやすいのか?原因や要因、回復プロセス、カウンセリングでできることなどについて書いていきたいと思います。

燃え尽き症候群(バーンアウト)とは何か?


燃え尽き症候群(英語:burnout syndrome)は、バーンアウトとも呼ばれており、 意欲を持って精力的に活動していたのに何らかの原因により意欲の急激な低下や疲労感によって社会的な適応が難しくなるような現象を指します。

それはまるで炎が燃え尽きていくようにエネルギーを失っていく様からこのような名前が付けられました。

燃え尽き症候群は、ドイツ生まれの心理学者ハーバート・フロイデンバーガーによって提唱された概念で、「持続的な職業的ストレスによって衰弱、意欲の喪失、情緒の荒廃、病気への抵抗力の低下、対人関係の親密さの減弱、人生に対する慢性的不満と悲観、職務上能率低下と職務怠慢などをもたらす症候群」と定義しています。

燃え尽き症候群(バーンアウト) の症状としては、

・燃え尽きたかのような意欲の低下
・無情で非人間的な対応をしてしまう
・自分には能力がないと思ってしまう
・達成感の欠如
・朝起きられない
・職場や学校に行きたくないという気持ちが強くなる
・もう努力をしたくないという気持ちが強くなる
・イライラやムカつき、怒りの気持ちが強くなる
・自己嫌悪の気持ちが強くなる
・こころの疲労感が強く慢性的に感じる
・人生への不満と希望の欠如
・目標を見失った感覚と虚脱感
・うつ病のような抑うつ症状
・社会参加への拒否
・対人関係の拒否感
・情緒が乱れやすくなる
・免疫力や抵抗力が低下しやすい傾向
・めまいや偏頭痛、自律神経失調症などの身体症状
・やる気が低下し、仕事の能力低下を引き起こす
・アルコールや過度な買い物など快楽を得られるものの摂取・行動が増える(依存度も高まる)
・突然の辞職など後先を考えない急な判断をしやすい
・家庭や家族に亀裂が入るような崩壊が起きることがある
・最悪のケースでは、自殺や犯罪、過労死なども起きる

などがあります。

燃え尽き症候群(バーンアウト)は、医療・福祉・教育関係などの対人サービス職に多い傾向がありますが、職種にかかわらず、スポーツ選手などでも経験される方がいます。

病名のような名前ですが、正式な医学的病名ではありませんので医師の判断や症状などにより付けられる病名は異なることもあります。

燃え尽き症候群(バーンアウト)がひどくなって、適応障害や大うつ病、身体症状症、依存性などになってしまうことがあり、それらの病名を診断されることもあります。

どうなると燃え尽きるのでしょうか?


これはいくつかの要因があると言われています。

①裏切られたケース

一つ目は努力をしたり、献身的に活動してきたにも関わらず、期待した結果が得られないといったケースがあります。

期待を裏切られ、無駄に終わった、意味がなかったという気持ちが沸いてくるものに該当します。

またこのような経験によって「学習性無力感」という状態になったり、併発する可能性もあります。

■学習性無力感(Learned helplessness)
学習性無力感とは、マーティン・セリグマンが提唱した概念で、努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと「何をしても無駄だ」と認知するようになり、不快な状態を乗り越えようとしたり、脱する努力を諦めてしまうことを指します。学習性無力感は、乗り越えよう、戦おうという方向に行かないばかりか、逃げたり回避しようとすることすらできなくなることも意味しています。

②念願が叶った後に起きるケース

2つ目は念願かなって目標を達成したあとに起きるケースです。

これは目標を達成したことで人生に目標がなくなることによって虚脱感を生む場合などが該当します。

念願が叶って「あれ、何のために生きていたんだっけ?」という経験です。

子供が巣立って抜け殻のようになってしまう女性の中年期など、ライフイベントと自分の生きがいなどが関係してくることもあります。

③高ストレス状態により起きるケース

3つ目は極度のストレスや緊張状態が持続的に続くような職場や職種において起きるケースです。

あまりの高ストレス状態や過緊張状態によって疲れ果ててしまいます。

よく一般的に言われている「ブラック企業(職場)」などで起きやすくなります。

④情緒的消耗によるケース

対人サービス職などでは、思いやりや誠実さなどの情緒的対応を多く提供する仕事です。

それらが日々提供される中で消耗し、継続的に費やされることで疲弊感や消耗感を感じていくことにより疲れ果ててしまうケースがこれに該当します。

社会心理学者クリスティーナ・マスラークによると、情緒の消耗を防ぐために思いやりのない割り切った対応をしてしまったり、相手の気持ちを無視したりしてしまう言動を取ってしまう「脱人格化」という防衛反応を起こしてしまうといいます。

その結果、思ったような成果や達成感が得られなくなり、自信を失ったり、やりがいや生きがいを感じられなくなることにつながりやすくなってしまいます。

燃え尽き症候群(バーンアウト)の要因と対策


燃え尽き症候群(バーンアウト) を引き起こす要因には「個人的な要因」と「環境的な要因」の2つがあるとされています。

個人的要因

個人的要因には、

  • 仕事に熱心で理想が高い
  • 完璧主義
  • 几帳面で執着気質
  • 相手や評価のために頑張りすぎてしまう
  • 頑張りすぎて力を抜けない、休めない
  • 人生の目標・生きがいが一極集中型
  • 自分を大切にする力や自分を優先する力が弱い
  • 職務の役割的人格とプライベートな人格を分けられない
  • 必要以上に献身的にしてしまう
  • 使命感に燃える気持ちが強い
  • 正直で、頼みごとを断れず、自分が先に折れ、几帳面で責任感などが過剰に強い(メランコリー親和型性格)

などがあるとされています。

これらの特質が悪いわけではないこともありますが、過剰に行き過ぎてしまうとリスクが高くなるかもしれません。

対人サービス職に必要な「ひたむきさや誠実さ」「他人と深く関わろうとする姿勢」がかえってバーンアウトの引き金になってしまうこともジレンマとしてあります。

バーンアウトになりにくい人は「マニュアル的対応」で事を処理するタイプとされています。

しかしこのマニュアル的対応で処理する対人サービス職はどうなのか?ということもこのジレンマには含まれます。

自分の個人要因に関しては、「ほどほど」というバランス感覚や自分を大切にするトレーニングなどが対策として良いかもしれません。

理想をちょうど良いところへ適応修正したり、休養をいつもよりとったり、少し頑張って有給をとったり、自分の気持ちを大切にして動くように練習したりなどいろいろ考えられると思います。

また人によってはカウンセリングなどで自分に向き合い、「ほどほど」を獲得したり、自分と他者とのバランス感覚を学んだり、自然に調節できるように原因と対峙されたりもします。

年齢とバーンアウトの研究もあり、年齢を重ね、経験を重ねて行くと現実を適切に理解できてくるためバーンアウトになりにくいと言われています。

環境的要因

環境的要因には、

  • 長時間勤務
  • 厳しすぎるノルマや罰
  • 身体的・精神的負荷が強すぎる仕事
  • 仕事に見合わない報酬
  • やりがいの見いだせない仕事・職務
  • 自律性や自由裁量の少ない職場
  • オーバートレーニング
  • 共感や思いやりのない職場の雰囲気
  • 役割の曖昧さ
  • 酷評や陰口などネガティブで非人道的扱いの多い職場
  • 現代社会との解離がある社風や職種

などがあります。

国や自治体からも働きがあり、整備が整ってきているところもあれば、そうでもないところがあります。

非共感的でおもいやりのない職場はなかなか介入ができないところであり、世代間でかなりのギャップがあるように思います。

世代間の違いや時代の流れを意識できない会社では離職率も高くなり、共感的で思いやりのある会社やチーム・仲間を大切にしている会社には人材が集まりやすいと言われています。

社内ルールなどで目に見える制度を作るとともに時代に合わせた人間性を重視していくことが求められています。

バーンアウトの回復プロセス


同志社大学の久保真人先生の論文「バーンアウト(燃え尽き症候群)ーヒューマンサービス職のストレス」から抜粋させていただきましたBernierの6段階の回復プロセスを紹介します。

※この研究では20人という少人数の対人サービス職の方々におけるインタビューにより分析と整理がされました。

  • 第一段階「問題を認める(自分の心の課題を自覚する)」
  • 第二段階「仕事から心理的・物理的距離をとる」
  • 第三段階「リラックスと休養」
  • 第四段階「価値観を問い直す」
  • 第五段階「働きの場を探す」
  • 第六段階「断ち切り、変化する」

対象者を選定したり、少人数ですのでどこまで参考になるかはわかりませんが、休職した方は最短で5週間、最長で50週間、その後は1人の方を除いて19名が同じ仕事に復帰せず、新たな環境で人生を再設計したようです。

燃え尽き、休み、再設計して、新たな人生を歩んでいくというプロセスをたどる方が多いということですね。

燃え尽き症候群(バーンアウト)とカウンセリング


燃え尽き症候群(バーンアウト)が起こりやすい4つのケースと個人的要因、環境的要因をみてきたように人それぞれの燃え尽き状態があります。

それは頑張った証で次の人生の目標を再設定する期間である場合もあれば、自分のこころの偏りや極端なところを調節する絶好のタイミングである場合もあれば、高ストレス状態から最適な状態へ向かっていく必要のある場合もあります。

どの状態の方でも望めばカウンセリングを受けることができますし、どのようなテーマや流れで行っていくかは人やその状況、目的によって異なります。

・自分の今までの人生の清算を行って、新たな目標や生き方を模索する
・ストレスや苦痛、燃え尽き感について話しながらこころを癒し、休める
・仕方が無かったものと向き合うべきものを明確に分けて、対応する
・燃え尽きた原因や要因を明らかにしていく
・やりがいや生きがいを見出す
・環境要因に働きかける方法を考え、実行する
・休養や長期休暇をとる(実行できるようにサポート)
・必要に応じて辞職や転職を行う(その準備をする)
・周囲に相談や協力できる状況を作る
・今回で感じた自分のこころの課題に向き合う
・とにかく自由に話す
・理解してくれない○○さんとの関係性と感情へ向き合う
・バーンアウトからどのように回復プロセスがあるのかを知る
・気の使い方のバランスをとれるようにする
・自分と他者のバランスをとれるようにする
・職務の役割人格とプライベートの人格を分ける
・ストレスコーピングやレジリエンスを向上させる
・カウンセラーを通じて会社に働きかける
・身の丈にあった理想や目標を再設定する
・自分の次のキャリア、仕事を選ぶ際のポイントを抽出

などそれぞれ必要なテーマがあると思います。

しっかりと休み、第二・第三の自分の人生を再設計し、未来に向けて歩まれていく中で、あの燃え尽き、もがいたあの期間が「人生の転機」であったことを後々になって理解出来ると思いますが、その苦痛のさなかではわからないものです。

バーンアウトは、「理想に燃え、使命感にあふれた人を襲う病」とも言われています。

理想や使命感がない人には経験できないものであり、頑張って生きていない人には感じられないものです。

そういうと不条理のようにも思いますが、どうしてもジレンマがあります。

燃え尽きや精神的ショックから立ちがり、成功を成し得た人の多くは言います。

「あの時のあの苦しみがあったから」と。

何を持って成功かは人それぞれですが、私たちが子供から大人になり、なんらかの生き方を実現するにあたって真剣に生きれば燃え尽きることもあります。

それはそこまで頑張った証でもあります。

すこしゆっくり休んでリラックスしてください。

ゆっくり休んだら再設計していきましょう。

人生はまだまだ長いですから、ゆっくり生きましょう。

記事監修
公認心理師 白石

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