知能に関する心理検査である「ウェクスラー式知能検査」「田中ビネー式知能検査法」「K-ABC(Ⅱ)」「グッドイナフ人物画知能検査(DAM)」「DN-CAS」の5種類の知能検査について書いていきたいと思います。
もくじ
ウェクスラー式知能検査
1939年にウェクスラー・ベルビュー知能検査「インテリジェント・テスト」を発表し、その10年後には子供のためのウェクスラー知能検査(WISC)を発表しました。
ウェクスラー式知能検査は、現在最も使われる知能検査として有名であり、パズルや計算、暗記、地理や歴史の問題からIQや言語理解、ワーキングメモリー、処理速度などの知能を図ることができます。
ウェクスラー式知能検査は、
・幼児用(3〜7歳)である「WPPSI」
・児童用(5〜16歳)である「WISC–4」
・成人用(16〜89歳)である「WAIS–3」「WAIS–4」
が用いられています。
検査官である臨床心理士からの質問などから家庭や学校、職場ではにおける困っているポイントに対して評価とアドバイスを行ってもらえるのも特徴的です。
成人検査では「言語性検査(VIQ)」と「動作性検査(PIQ)」を行い、「総合IQ(TIQ、FIQ)」を算出します。
IQは100点を中心としており、多くの一般的な人(約68%)が85点〜115点になっています。
知能検査とは簡単に言うと、
●自分の特徴をほかの人と比較して知ることが出来る
●自分の知能の長所と短所を知ることが出来る
●特徴を知ることにより今後の生活や学業、仕事に活かせる
特徴があります。
一般的には 総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)が70以下の場合、知的障害の可能性があると言われています。
また言語性IQと動作性IQの差「ディスクレパンシー」の値が15以上あると「発達障害の疑いあり」となるように、発達障害の可能性についても調べることができます。
WAIS–4(成人版)
「WAIS–4」とはウェクスラー式知能検査の成人用の第4版のことで16歳以上の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。
検査にかかる時間は60~90分で、検査を行える病院や民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。
●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度
の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ)で個人の特性を評価しています。
上記4つの指標のどこが強く(得意)、弱い(苦手)かを知ることによって日常に活かしていくことができます。
自分の努力不足と思っているところがそういった「特性」であるという視点から今後を考えていけることも多いともいます。
一般的には 総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)が70以下の場合、知的障害の可能性があると言われています。
また言語性IQと動作性IQの差「ディスクレパンシー」の値が15以上あると「発達障害の疑いあり」となるように、発達障害の可能性についても調べることができます。
※障害の確定診断としては用いられていません。
WISC–4(児童用)
「 WISC–4 」とはウェクスラー式知能検査の児童用の第4版のことで5歳~16歳11ヶ月の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。
田中ビネー式知能検査よりもどこが強く(得意)、どこが弱い(苦手)かを知ることができ、日常に活かしていくことができます。
検査にかかる時間は60~90分で、検査を行える病院や児童相談所、民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。
WAIS-4と同様で
●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度
の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)で個人の特性を評価しています。
一般的には 総合的な指標(全検査 IQ)が70以下の場合、知的障害の可能性があると言われています。(中度の場合、58.2(PS)~46.4(FSIQ)とされています)
識字障害、算数障害、受容-表出書字障害、書字障害、LD+ADHD,ADHD、ASD,アスペルガー障害、WM、などの可能性も算出することができます。
WPPSI-3 (幼児用)
「 WPPSI-3」とはウェクスラー式知能検査の幼児用の第3版のことで2歳6ヶ月~7歳3ヶ月の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。
就学前のお子様の検査や、保育園や幼稚園に通っていて少し自分のお子様の発達や知能を検査したいと思われる方々に利用されています。
検査にかかる時間は40分(4~7歳は50~70分)で、検査を行える病院や保育園、幼稚園、民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。
WAIS-4と同様で
●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度
の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)で個人の特性を評価しています。
また「語い総合得点(GLC)」という特性を算出することもできます。
田中ビネー式知能検査法
東京帝国大学精神医学教室の三宅鉱一によってビネー検査法が日本ではじめて紹介され、ビネー法とチーエン(Ziehen) の精神検査法を参考として25個の問題からなる尺度を作成します。
その後、久保良英がビネー式知能検査を日本の風習にあわせた形で導入することを目的として、5歳~15歳までの問題を各年齢5問ずつ合計40問を作成しています。
鈴木治太郎は16000人の被験者による「鈴木ビネー尺度」を発表し、修正を重ね「鈴木ビネー検査」が評価され、広く活用されていきます。
しかし1956年以降改定が行われていません。
そして現在、一般的に用いられるのが「田中ビネー知能検査法」です。
田中寛一は世界中の子供達の言語や心身を調査し、その影響を受けない図形や数字を用いる集団式の知能検査を開発します。
1937 年版スタンフォード改定案を参考にしながら、問題数は120問作成されました。
彼の死後も改定と修正が行われ、最新版は2005年に発表された「田中ビネー知能検査V(ファイブ)」です。
検査対象は2歳から成人まで行うことができ、年齢によって問題が構成されているため、発達レベルとの比較がわかりやすくなっています。
検査としては、被検査者の精神的・身体的負担が少なく、多角的な総合検査を行うことができます。
精神年齢(MA)と生活年齢(CA)の比較によって知能指数(IQ)として算出されるように作成されており、「思考」「言語」「記憶」「数量」「知覚」などの問題構成がされています。
なお14歳以上は精神年齢の特定ではなく、知能領域が「結晶性」「流動性」「記憶」「論理推理」の4分野に分けられ、得意不得意が分析的に測定できるようになっています。
採点による評価として 「田中ビネー知能検査V」 では以下のように判定します。
- 知能指数(IQ)の判定 平均:100
- 健常領域:80以上
- 知的境界領域:71~79
- 軽度知的障害:51~70
- 中度知的障害:36~50
- 重度知的障害:21~35
- 最重度知的障害:20以下
K-ABC
K-ABC(Kaufman Assessment Battery for Children)は、カウフマン夫妻によって開発され、1993年に日本で標準化された知能検査です。
適応は2歳6ヶ月から12歳11ヶ月(K-ABCⅡ上限18歳11ヶ月)となっており、認知処理過程と知識や技能における習得度から知能を評価します。
自分の得意な認知処理過程と苦手なプロセスがわかるため、今後の学習や指導、教育に生かすことができます。
K-ABCは、Cattell and Hornの「Gf-Gc モデルの流体」および「結晶化知能」とCarrollの「3層階層」を統合した「CHC理論(Cattell–Horn–Carroll theory)」を基本理論として作成・測定しています。
100を基準として項目別に上下のばらつきを見て、発達水準を導き出す形で評価が行われます。
グッドイナフ人物画知能検査(DAM)
グッドイナフ人物画知能検査(DAM)は、5分以内の描画を行う検査のため話せない、聴覚や言語などに障害がある自動にも実施できる知能検査です。
1926年にF.L.グッドイナフ(F.L.Goodenough)が開発し、 1944年に桐原善雄によってこの描画法が標準化されました。
「掻画期(1歳半~3歳頃)」→「象徴画期(3歳頃~7歳頃)」→「写実期(8~9歳頃)」の発達過程を経ていきますが、10歳以降では心理状態や知覚を反映した描画でなくなるという考えから適応年齢は3歳~10歳頃までです。
50項目で満点が50点であり、「動作性知能指数(PIQ)」を測定することができますが、この数値のみで知能発達を測定できたとは言い難いところがあります。
しかしウェクスラー式知能検査やビネー式知能検査とテスト・バッテリーを組んだり、知能検査の最初のラポール形成などに活用されることも多くあります。
DN-CAS
DN-CASは、Luriaの神経心理学モデルを背景としたインド出身のJ. P. Dasによる「知能のPASS理論」を基礎とする「認知処理過程」を理解し、支援の応用へつなげるための検査です。
「K-ABC」に「プランニング」と「注意の機能の尺度」がないことをDas博士は指摘し,その必要性を強調されました。
対象は5歳~17歳11ヶ月で、
- 「プランニング(P)」・・・解決方法や決定する認知プロセス
- 「注意(A)」・・・必要なものに注意できる認知プロセス
- 「同時処理(S)」・・・まとまりとして統合する認知プロセス
- 「継次処理(S)」・・・順序や系列として統合できる認知プロセス
の4つの認知機能(PASS)を調べることができます。
おわりに
知能に関する心理検査を5種紹介してきましたが、いかがであったでしょうか?
知能検査と一言で言ってもそれぞれに調べる測定項目が異なり、それぞれに有用な理解や発見を得ることができます。
少しでも参考になれば幸いです。
記事監修
公認心理師 白石
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