認知症の検査では、MRIなどを利用した「脳画像検査」と医師や心理士からの質問に答える「神経心理学的検査」があります。

ここでは「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」と「MMSE」を中心に認知症で用いられる心理検査について書いていきます。

「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」とは?


「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」 は、 1974年に認知症医療の第一人者の精神科医長谷川和夫氏によって開発され、認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができる日本でよく活用されているスクリーニングテストです。

※スクリーニング( 英: screening )は、共通検査によって、目標疾患の罹患を疑われる・予測される対象者をその集団の中から選別することをいいます。

所要時間が約5~10分でテストができ、医師や心理士以外にも看護師や介護スタッフなど幅広く活用されています。

設問の内容は

①「年齢はいくつかですか?」
②「今日は何年何月何日何曜日ですか?」
③「今いる場所はどこですか?」
④「(3つの単語を聞いて覚えてもらって)これから挙げる3つの言葉を言ってみてください。」
⑤「100 から7を順番に引いてください。(間違えで打ち切り)」
⑥「これから言う数字を逆から言ってください。 (間違えで打ち切り) 」
⑦「設問4で覚えた言葉を、もう一度言ってください。」
⑧「(5つの品物を呈示して)隠しますので何があったか言ってください。」
⑨「知っている野菜の名前をできるだけたくさん言ってください(10秒でないと打ち切り)」

の9つから構成されています。

点数は30点満点中で20点以下だと認知症の疑いがあり、点数が低いほど重度であるとされています。

■検査の点数から想定される重症度

「非認知症」   :24.45±3.60点
「軽度認知症」  :17.85±4.00点
「中等度認知症」 :14.10±2.83点
「やや高度認知症」:9.23±4.46点
「高度認知症」  :4.75±2.95点

※難聴や失語の状態の確認や当日の気分と体調による影響を受けることを鑑みる必要もある。

「ミニメンタルステート検査(MMSE)」 とは?


ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination:以下MMSE) も「HDS-R(長谷川式)」と同じく認知症のスクリーニング検査として世界的標準として世界中で活用されています。

口頭のみで回答できる 「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」 と異なって、図形模写などの動作性のテストがあるためペンを握ったり字が書く設問があります。

1975年にアメリカのフォルスタイン夫妻とポール・マックヒューの3名の精神科医が入院患者の認知状態を測定する目的で作成したものです。

MMSE検査に必要な時間は10~15分程度です。

  • 見当識
  • 即時想起
  • 注意と計算能力
  • 遅延再生(短期記憶)
  • 言語的能力
  • 図形的能力(空間認知)

を検査していきます。※10秒無回答で次に進みます。

30点満点中、27点以下だと軽度認知障害(MCI)の疑いがあり、23点以下(MMSE-Jでは20点以下)だと認知症の疑いがあります。

「HDS-R」と「MMSE」の違い


相互に共通する検査内容も多いですが、MMSEでは紙を折ったり、文章を書いたり、図形描写など手を用いる検査があります。

重要な違いとして、「HDS-R」では記憶力を調べる検査が多いため「アルツハイマー型認知症」、「MMSE」では空間認識能力を調べる検査が多いため「脳血管型認知症」の方が得点が低くなる特徴があります。

認知症の患者さんに両検査を行うと得点の差が大きいこともありますので両検査を行うことで認知症の特徴をつかむことが可能となります。

CDR(Clinical Dementia Rating)


CDR(Clinical Dementia Rating)とは、患者さんからのご協力が得られない場合でも専門家が全般的評価をし、家族や介護者の方からの情報も含めて「認知症の重症度」を評定することができる検査です。

①記憶
②見当識
③判断力および問題解決
④社会適応
⑤趣味や関心(家族の状況含む)
⑥介護状況

の6項目から5段階で重症度を評定します。

  • 健康(CDR:0)
  • 認知症の疑い(CDR:0.5)
  • 軽度認知症(CDR:1)
  • 中等度認知症(CDR:2)
  • 高度認知症(CDR:3)

その他の認知症の心理検査


「HDS-R」と「MMSE」以外にも

①Mini-Cog(所要時間2分、3語の再生と時計描写のテスト、2点以下で認知症疑い)
②MoCA(所要時間10分、25点以下が MCI(軽度認知症)の疑い、糖尿病患者の認知機能障害の特定ができる)
③DASC-21(所要時間5~10分、認知機能と生活機能の障害を調べる)
④COGNISTAT(所要時間15~25分、結果を図式化でき、8点以下が障害域)
⑤ADAS-J cog(所要時間約40分、認知障害の重症度を調べる検査、点数が高いほど障害高度)
⑥FAB(所要時間5~10分、前頭前野を調べることができ、脳血管障害の患者にも適応)
⑦MEDE(所要時間30~60分、家族や他者からの評価もでき、物忘れなどの自己評価にも使われる)

などのように目的に応じて多くの検査が用いられています。


記事監修
公認心理師 白石

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