心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではヘルマン・ロールシャッハと「ロールシャッハ・テスト」について書いていきたいと思います。
ヘルマン・ロールシャッハについて
ヘルマン・ロールシャッハ(Hermann Rorschach)は1884年スイスのチューリッヒに住む画家であり、美術の教師であった父のもとに生まれました。
小学校の頃は、いつも絵を描いていたため「クレックス(インクのシミ)」というあだ名があったほどでした。
最初は芸術家を目指していましたが、ドイツの生物学者ヘッケルの後押しでチューリッヒ大学へ進学し、精神医学の道に進みました。
ロシアとベルリンに留学し、精神科医ブロイラーの弟子となり、ユングの精神病理学を学びます。
プライベートでは、オルガ・シュテンペリンと婚約し、ロシアに移住し、二人の子供を授かります。
1911年ごろよりインクのシミを用いた連想実験を始め、精神分析学も学ぶようになり、1921年に「ロールシャッハ・テスト」を発表しますが、腹膜炎により37歳の若さで亡くなっています。
ロールシャッハ・テスト
様々な解釈が可能なインクのシミを用いたロールシャッハ・テストは被験者の深層の人格的特徴や衝動を読み取ることに長けるものでした。
このシミは解釈がいかのようにもできる可能性があり、被験者の防衛意識が弱まったり、思考の兆候が出やすく、無意識が最大限表面化する特性があるといわれています。
ロールシャッハはこの検査を行っていくと無意識の解明だけではなく、診断ツールとしても活用できることに気づきます。
その検査では、10種類の図形を見せて
①何回の反応があったのか(反応時間と拒否回数)
②図形だけの反応か?色彩や動きへの反応はあるのか?
③全体的に読み取っているか?部分には反応するか?
④被験者にはその図形が何に見えていたのか?
などを測定していきました。
アルフレッド・ビネーやアメリカの心理学者ジョン・エクスナーらはこのテストを発展させ、現代で非常に用いられる心理テストとして活用されています。
特にエクスナーは、スコアリングに欠陥があることに気づき、大規模なデータベースに基づき、包括的なスコアリングシステム「エクスナー法」を構築しました。
しかし日本人ではこのアメリカ人を対象としたスコアでは適応が難しいことを鑑み、心理学者の片口安史の「片口法」を発表し、日本人にも活用されています。※エクスナー法も日本人に対してよく用いられます。
この検査は、検査者の熟練度合いや見識、知識などが必要とされるため誰でも行うことはできない検査法です。
主に精神分析学やその療法を用いる学派の先生に相談するとこのテストがよく用いられ、被験者への深層的理解や治療の参考とされています。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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