心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではデイヴィッド・ウェクスラーと「ウェクスラー式知能検査」について書いていきたいと思います。

デイヴィッド・ウェクスラーについて


デイヴィッド・ウェクスラー

デイヴィッド・ウェクスラー(David Wechsler)は1896年ルーマニアのレスペジのユダヤ人家庭に生まれました。

子供の頃に両親とともにアメリカへ移住し、ニューヨーク市立大学とコロンビア大学で心理学を学び、修士号と博士号を取得します。

チャールズ・スピアマンとカール・ピアソンらとともに第二次世界大戦中にアメリカ陸軍と協力し、集団の知能を図るための心理テストを作成します。

またビネの心理テストに非言語的推論を追加し、発展させていきます。

ウェクスラーの考えでは、知能は合理的に考える能力だけではなく、目的を持って振る舞い、自分の置かれている環境を効率的に処理する能力も含まれると主張しました。

1932年にベルビュー精神病院の心理部門のチーフとなり、1967年まで勤めました。

ウェクスラー式知能検査


1939年にウェクスラー・ベルビュー知能検査「インテリジェント・テスト」を発表し、その10年後には子供のためのウェクスラー知能検査(WISC)を発表しました。

ウェクスラー式知能検査は、現在最も使われる知能検査として有名であり、パズルや計算、暗記、地理や歴史の問題からIQや言語理解、ワーキングメモリー、処理速度などの知能を図ることができます。

ウェクスラー式知能検査は、

・幼児用(3〜7歳)である「WPPSI」
・児童用(5〜16歳)である「WISC–4」
・成人用(16〜89歳)である「WAIS–3」「WAIS–4」

が用いられています。

検査官である臨床心理士からの質問などから家庭や学校、職場ではにおける困っているポイントに対して評価とアドバイスを行ってもらえるのも特徴的です。

成人検査では「言語性検査(VIQ)」と「動作性検査(PIQ)」を行い、「総合IQ(TIQ、FIQ)」を算出します。

IQは100点を中心としており、多くの一般的な人(約68%)が85点〜115点になっています。

知能検査とは簡単に言うと、

●自分の特徴をほかの人と比較して知ることが出来る
●自分の知能の長所と短所を知ることが出来る
●特徴を知ることにより今後の生活や学業、仕事に活かせる

特徴があります。

それではこの3つの知能検査の特徴について見ていきます。

WAIS–4(成人版)


「WAIS–4」とはウェクスラー式知能検査の成人用の第4版のことで16歳以上の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。

検査にかかる時間は60~90分で、検査を行える病院や民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。

●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度

の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ)で個人の特性を評価しています。

上記4つの指標のどこが強く(得意)、弱い(苦手)かを知ることによって日常に活かしていくことができます。

自分の努力不足と思っているところがそういった「特性」であるという視点から今後を考えていけることも多いともいます。

一般的には 総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)が70以下の場合、知的障害の可能性があると言われています。

また言語性IQと動作性IQの差「ディスクレパンシー」の値が15以上あると「発達障害の疑いあり」となるように、発達障害の可能性についても調べることができます。

※障害の確定診断としては用いられていません。

WISC–4(児童用)


「 WISC–4 」とはウェクスラー式知能検査の児童用の第4版のことで5歳~16歳11ヶ月の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。

田中ビネー式知能検査よりもどこが強く(得意)、どこが弱い(苦手)かを知ることができ、日常に活かしていくことができます。

検査にかかる時間は60~90分で、検査を行える病院や児童相談所、民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。

WAIS-4と同様で

●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度

の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)で個人の特性を評価しています。

一般的には 総合的な指標(全検査 IQ)が70以下の場合、知的障害の可能性があると言われています。(中度の場合、58.2(PS)~46.4(FSIQ)とされています)

識字障害、算数障害、受容-表出書字障害、書字障害、LD+ADHD,ADHD、ASD,アスペルガー障害、WM、などの可能性も算出することができます。

WPPSI-3 (幼児用)


「 WPPSI-3」とはウェクスラー式知能検査の幼児用の第3版のことで2歳6ヶ月~7歳3ヶ月の方の知能や発達の状態を調べる上で良く用いられる心理検査です。

就学前のお子様の検査や、保育園や幼稚園に通っていて少し自分のお子様の発達や知能を検査したいと思われる方々に利用されています。

検査にかかる時間は40分(4~7歳は50~70分)で、検査を行える病院や保育園、幼稚園、民間相談室・カウンセリングルームなどで行うことができます。

WAIS-4と同様で

●言語理解(結晶性知能)
●知覚推理(視覚処理と推論)
●ワーキングメモリー(短期記憶)
●処理速度

の4つの指標と、それらを合わせた総合的な指標(全検査 IQ:FSIQ)で個人の特性を評価しています。

また「語い総合得点(GLC)」という特性を算出することもできます。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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