過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学の哲学的ルーツであるフランシス・ゴルトンと「優生学」「平均への回帰」「人格論」について書いていきたいと思います。

フランシス・ゴルトンについて


フランシス・ゴルトン

フランシス・ゴルトン(英語:Francis Galton)は、1822年にバーミンガムで生まれたイギリスの遺伝学者であり、統計学の祖と呼ばれる人物です。

遺伝学のみならず、人類学、犯罪学、地理学、天文学、生物学、心理学など広範な博識を持つ学者であり、探検家でもありました。

父は裕福な銀行家で、並外れた教育資源もあり、2歳から読み書きできるほどの天才であったようです。

医学と数学を学んだのち、父が倒れ、精神衰弱もあって学業が中断されますが、旅行と発明に没頭します。

後に結婚しますが、子供には恵まれず、生物学や心理学の測定と試験の考案など著述に努め、さまざまな賞を受賞します。

主著には、1869年「遺伝的資質」、1874年「イギリスの科学人-その遺伝と環境」、1875年「双子の物語」などがあります。

ちなみにゴルトンの親戚の従兄には進化論で有名なチャールズ・ダーウィンがいることもあって進化論の影響を受け、人の人格や遺伝、能力などに興味を抱き、今日の個人心理学の基礎をつくった一人と称されています。※心理学的には、はじめて心理テストを行った人物であるとも言われています。

統計学では、2回目の試験の方が1回目よりも平均的な成績になる現象である「平均への回帰」や2つの確率変数の間にある線形な関係の強弱を測る指標である「相関係数」などの概念を提唱しています。

生物学や遺伝学に統計的な手法を用いたゴルトンの研究は、「集団遺伝学」の基礎にもなったとされています。

ゴルトンと優生学


優生学(ユージェニクス:ギリシャ語で『良いタネ』の意味)とは、人間の性質が遺伝的要因に大きくあるとして、その劣化を防ごうとするネガティブ・ユージェニクスと積極的によくしていこうとするポジティブ・ユージェニクスがあります。

もっと激しい表現で説明されるのが、子孫を残すに相応しないものが子孫を残す事を防ぐのがネガティブ・ユージェニクスであり、子孫を残すに相応するものが子孫を残す事を奨励するのがポジティブ・ユージェニクスといった考え方です。

生存に適さない人間は生まれてこない方が良いと行き過ぎた捉え方をされ、差別や強制的な不妊手術、人権問題、階級差別、ナチスの安楽死計画などを正当化する原因にもなったとされるものです。

この優生学の命名と基礎になったのがこのゴルトンである。

しかし彼はこの優生学をネガティブな方向ではなく、優れた人間が多くなるようなポジティブな方向へ活かす事を考えていたようです。

今では考えられない非人道的なモラルを欠く考えかもしれませんが、当時のイギリスの階級社会では、上流階級や富裕階級同士の結婚が当たり前のように推奨されていました。

優生学と平均への回帰


ゴルトンは後に行った統計学的な調査によって優生学の複雑さに気づくことになります。

背の高い夫婦と子供を調べたところ、

・親の身長が高ければ子供の身長も高い傾向がある「正の相関」
・親の世代と子の世代の身長のバラつきにはほとんど差がない
・非常に身長が高い親の子供は親よりも身長が低く平均に近くなる「平均への回帰」

の3つの相関関係がある事を発見します。

優秀な人間が優秀な人間を生む、劣った人間が劣った人間を生むだけではないということが明らかになりました。

この研究から平均的であるということは生きやすく、生き残りやすいということの可能性も示唆しており、遺伝子レベルで平均を目指す意図もあることが明らかになったといえます。

優生学はかなり歪曲して用いられたり、都合の良い言い訳として使われましたが、統計をしっかり取ることによりさまざまな相関関係を明らかにすることができました。

人格は遺伝と環境の双方が本質的である


17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックは、「全ての子供のこころは白紙であり、誰でも平等である」と説き、ダーウィンは「人間の発達はすべて環境への適応の産物だ」と説いていました。

ゴルトンは、遺伝と環境が競合せざるを得ない場合は、遺伝の方が重要な役割を果たすと主張しましたが、人格の形成に当たっては遺伝と環境の双方が本質的で、先天的な資質があってもそれなりの環境がなければダメになってしまうとも語っています。

要するに環境や教育の重要性も主張しているということです。

彼の提唱した優生学ばかりが目立ってしまい、誤解が生じているかもしれませんが、人は教育や環境で育つことも同時に訴えています。

後に行動主義者であるジョン・ワトソンは「能力であれ、資質であれ、気質であれ、心的構成であれ、そうしたものに遺伝的な要因はない」と述べ、行動療法が発展していきます。

そして近年まで続いている「遺伝か?環境か?」という論争に発展していくのです。

近年の研究では、安藤寿康氏が双子の研究から性格に関しての遺伝が約50%、環境が約50%というデータを発表しています。

その決着は未だ付いておらず、誰と出会い、どのような出来事に遭遇し、何に時間を使い、どのような環境でどのような判断と意志を持ち、何をしていくかという選択の連続の影響を数値で測ることの難しさを物語っています。

しかし遺伝も環境もどちらも大切であることは間違いないこととして認識されています

ゴルトンは、偏見と先入観にとらわれないようにデータや統計的手法を用いることの大切さを後世に残しました。

現代の科学的根拠であるエビデンスの祖といっても過言ではないかもしれません。

最後にゴルトンの伝承されている名言を紹介します。

ある人が実際に性能を伝承するには、 才能と熱意と気迫がなければならぬ。
  

フランシス・ゴルトン

参考文献

統計学の巨人ゴルトンとピアソン 酒井弘憲
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか著

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