過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学の行動理論に影響を与えた一人であるエドワード・トールマンと 「潜在的学習」「サイン・ゲシュタルト説 」について書いていきたいと思います。

エドワード・トールマンについて


エドワード・チェイス・トールマン

エドワード・チェイス・トールマン(Edward Chase Tolman)は、1886年アメリカのマサチューセッツ州ウェスト・ニュートンの裕福な家庭に生まれました。

マサチューセッツ工科大学で学び、1911年に電気化学で学位を取得します。

ウィリアムズ・ジェイムズの著作を読んだ後、ハーヴァードの大学院進学を決め、専攻を哲学と心理学に変えます。

研究中にはドイツへ旅行し、ゲシュタルト心理学を学び、博士号を取得後、ノースウェスタン大学で教鞭をとる。

■ゲシュタルト心理学
19世紀末南ドイツにて創始された心理学で「形態心理学」とも呼ばれます。
要素や原因追求という部分的なものよりも全体性やその構造を重要視する心理学です。(全体がまとまった構造をドイツ語でゲシュタルトと言います。)

不戦主義的な見解が災いして職を失い、カリフォルニア大学バークレー校へ移り、有名な実験を多く行なっていきます。

主著には、

1932年「新行動主義心理学–動物と人間における目的的行動」
1942年「戦争への衝動」
1951年「心理学論文集」

などがあります。

トールマンは、行動主義心理学において認知的な側面を重視し(認知的行動主義)、のちの認知心理学の誕生へ多大な影響を与えている心理学者です。

潜在的学習


潜在的学習(latent learning)とは、報酬がない時期に潜在的に進行していた学習が、報酬によって顕在化するという学習の形態です。

ネズミの実験では、報酬を得られなくても事前に迷路を走る経験から認知地図を作り出し(学習)、いざ餌が与えられたらその地図を内的に読みながら素早くゴール地点に向かえるようにしている働きのことです。

トールマンの考えでは、人間や動物は普段の暮らしの中で周囲世界についての認知マップを作り上げ、その壮大な迷路の中でゴールを目指していると考えました。

サイン・ゲシュタルト説


学習とは刺激と反応の連合(S–R理論)ではなく、刺激や手段(sign)と意味のある目的や目標対象(significate)が結びつく関係「S–S理論」による認知連合によるものとして考え、その考えによる仮説を「サイン・ゲシュタルト説(記号学習説)」といいます。

期待や予測といった認知的要因を重視し、個人の認知形態である「認知地図」も含まれます。

ようするに学習は、単純な刺激と反応による連合ではなく、手段と目的関係が認知されていく過程にあるという考え方です。

部分(サイン)から全体(ゲシュタルト)が予測や期待されて行動に変容が起きるということです。

なおトールマンの理論を用いたアプローチを「目的論的行動主義」と呼んだりします。

⬛️トールマンと「S–O–R理論」
既存のS–R理論に対し、人間の認知によって変動することをウッドワースが提唱し、のちにハルやトルーマンなどもこの理論に対して発表を行なっています。
これは「S–O–R理論」と呼ばれ、刺激(Stimulate)と反応(Response)の間に有機体や生活体(Organism)の「O」を組み込みました。

※エドウィン・ガスリーは「S-R接近理論」を提唱し、刺激と反応の結合の強さは時間的、空間的接近に依存すると主張しました。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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