ここでは「ストレスに弱い状態」に関して、興味がある方、悩まれている方、克服されたい方などに向けて「ストレスに弱い状態」がなぜ起きるのか?を追求しながらカウンセリングと心理療法の可能性について説明していきます。

ストレスに弱いってどういうこと?


「ストレスに弱い」という表現は一般的な表現としてよく用いられます。

他人に「ストレスに弱い」言われる場合(言う場合)もあれば、自分自身に思う場合もあります。

「弱い」という言葉を心理学では、「脆弱性(vulnerability)」という言葉で用いられたりします。

抽象的な表現でもありますので、まずはどのような意味を含んでいるのかを考えていきたいと思います。

一般的に「ストレスに弱い」と表現される場合、代表的なものが「ストレスに耐える力(ストレス耐性)が弱い」という能力に対して用いられていると思います。

ストレス耐性(stress tolerance)とは、ストレスにどれだけ耐えられるか?どれだけ抵抗できるか?といった意味で用いられ、よくビジネスシーンで使用される言葉です。

  • ストレスをどれくらい溜めていられるかという「容量」
  • 過去に受けたストレスなどの「経験」
  • ストレスを感じやすい性格や捉え方などの「回避能力」
  • ストレスの原因や要因に気づく「感知能力」
  • ストレスに対応する「根本の処理能力」
  • ストレスを良い方向に捉えることができる「転換能力」

などがストレス耐性を決定する要素とされています。

この要素に照らし合わせると、「ストレスに弱い」ということは、

  • ストレスを溜められる量が少ない
  • 過去に受けた経験がトラウマや恐怖になっていたり、傷つきやすさになっている
  • 過去に同じようなストレスを乗り越えた経験が少ない
  • ストレスを感じやすい性格や捉え方などの認知をしている
  • ストレスの原因や要因に気づかない
  • ストレスに対応する、処理する力が弱い
  • ストレスを良い方向へ転換できない

ということになります。

ということは

  • ストレスを溜める量が増える
  • 過去から学び活かし、経験値を増やす
  • ストレスを感じやすい捉え方や解釈を修正・変容させる
  • ストレスの原因や要因に気づく
  • ストレスに対応・処理する力をつける
  • ストレスを良い方向へ転換する

ことを行っていけば次第にストレス耐性が強まり、ストレスに強くなるといったことが可能になるということです。

コーピング

コーピング(英語:coping)とは、問題に対処する・切り抜けるという意味のcopeに由来する言葉で、ストレスに対処するために行われる個人の認知的および行動上の努力のことをいいます。

コーピングには以下のような種類があります。

①ストレッサーに対するコーピング・・・ストレスの原因となっている刺激を避ける。(やめる、離れる、見えなくする)

②認知に対するコーピング・・・考え方や捉え方などの認知を修正・変容する

③反応に対するコーピング・・・感情や身体反応を発散させたり、休ませたり、鎮める、リラックスする

④社会的コーピング・・・相談する、話を聞いてもらう、第三者の手助けを借りる

このようなストレスに対処する力(コーピング能力)も高めていくことでストレスに強く対応することができます。

人に相談できる人ほどストレスコーピング高いと言われています

レジリエンス

レジリエンス(resilience)とは、ストレスなどの外力による歪みを跳ね返す力や正常な平衡状態を維持することができる能力、回復力といった意味で用いられます。

弱いという「脆弱性(vulnerability)」の反対の概念で自発的治癒力という意味あります。

レジリエンスを構成するものとして

  • 落ち着きを保つ「感情調節力」
  • 理性的にコントロールする「衝動調節力」
  • 「楽観力」
  • 「原因分析力」
  • 他者に対する「共感性」
  • 自分は実現できると思える「自己効力感」
  • 働きかける能力の「リーチアウト力」

などの能力が大切とされています。

このようにレジリエンス能力を高めることによって

  • ストレスに強くなる
  • ストレスの処理能力が向上する
  • ストレスによるダメージの回復

などが期待できます。

アメリカ心理学会は、以下の「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています。

1.親戚や友人らと良好な関係を維持する。
2.危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。
3.変えられない状況を受容する。
4.現実的な目標を立て、それに向かって進む。
5.不利な状況であっても、決断し行動する。
6.損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す。
7.自信を深める。
8.長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する。
9.希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する。
10.心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う。

レジリエンス (心理学)『ウィキペディア(Wikipedia)』

「ストレスに弱い」に関連する因子

「ストレスに弱い」とされる因子を記載しておきます。

※因子とは、ある結果を成り立たせるもとになる要素(ファクター)のことです。

  • 傷つきやすい
  • 落ち込みやすい
  • 気弱になる
  • 泣きやすい
  • 拗ねてしまう
  • ダメージが長引きやすい
  • 苦しい感情が続いてしまう
  • ふさぎ込みやすい
  • 過敏
  • 恐れやすい
  • 自信をなくしやすい
  • 回避しがちになる
  • 回復が遅い
  • 自分への自責の念が強い
  • うまく乗り越えられない
  • うまく適応できない
  • 細かいことが気になる神経質
  • 真面目な気質
  • せっかちな気質
  • 良い人であろうとする気質
  • 人の嫌な面ばかりが気になる性格
  • 一人で抱えやすい性格
  • 完璧主義
  • 短気
  • 競争志向・野心的気質
  • 傷つきやすい気質
  • 気にする気質が強い
  • 趣味や熱中できるものがない
  • 良質の睡眠が取れない
  • 病気がある
  • 愛着形成の問題
  • 助けて欲しい
  • トラウマ
  • 苦手意識
  • 思い込み
  • 弱くなることで成功してきた経験
  • ストレスに耐える経験が少ない
  • ストレスを乗り越える経験が少ない
  • ストレスに適応してきた経験が少ない
  • ストレスを感じやすくする解釈や捉え方がある
  • 自己肯定感が弱い、上手く使えていない
  • 自己効力感が弱い、上手く使えていない
  • 自分を信じる力が弱い、上手く使えていない
  • ネガティブに捉えやすい
  • ポジティブな意味付けをする力が弱い、上手く使えていない
  • ストレスを「受け入れる力」が弱い、上手く使えていない
  • 自分を支持してくれる人がいる「人間関係」がない、もしくは希薄
  • 気楽に捉える「楽観主義」が弱い、上手く使えていない
  • ストレスを「発散・解消する力」が弱い、上手く使えていない
  • 良好な人間関係を「構築する力」が弱い、上手く使えていない
  • 耐えよう、乗り越えよう、適応しようとする「意思」が弱い、上手く使えていない

「ストレスに弱い」を的確に表現すると

上記のストレスの因子すべてが当てはまりましたでしょうか?

すべてではなければ、

自分は○○といった弱さがあるけど、○○のような弱さはない人ということになります。

的確に表現していくとストレスに弱いところもあれば、強いところもあれば、普通のところもあるといった混在型であることが多いと思います。

であるにも関わらず私たちはついつい「ストレスに弱い」といった一言に集約してしまいがちです

認知行動療法などでは、このことを「過度の一般化」と言ったりします。

ストレス耐性の項目でも容量のキャパシティーは少ないが原因に気づいて対処することはある程度できるといった具合に出来ていることと、出来ていないことがあると思います。

そういう全人的な視点で「弱さ」をみていく視点があるのとないのでは大きな違いをうみます。

ストレスに弱い状態の「状態」とは?


タイトルにあえて「状態」という言葉を入れたのには理由があります。

人生うまくいっていると心に余裕が生まれますのでストレスに対して余裕が生まれます。人生がうまくいっていない場合には心の余裕がなく、ストレスに対して弱くなる傾向があります。

またカウンセリングや心理療法でクライエントが自分の弱さと向き合い、その弱さを受け入れ、捉え方や解釈などが変容し、強くなっていく姿をたくさん見てまいりました。

ご本人の意思にもよりますが、弱さは固定的なものではなく、流動的なものであるという意味でその時の状態を表す表現をいたしました。

誰でも自分の弱さを受け入れることができず、否認したり、見ないようにしたり、理想的な自分を追いかけたりするものです。

「こんな自分は自分ではない」という扱いにしてしまいますが、向き合い・受け入れていく中で「弱さを認められる強さ」を獲得していきます。

人生はなんとも不思議なものです。

地獄のような苦しみが、「なんであんなに苦しかったんだろう」という変容のプロセスが体験できることがありますから。

「ストレスに弱い状態」へのカウンセリングと心理療法の可能性


まずクライエントの「ストレスに弱い状態」になっている

  • 今の状況
  • どのようにしたいか(目標や目的)
  • 原因や要因などの因子

などを明らかにしていきます。

クライエントは自分の気持ちに共感的・受容的な態度で温かく見守られながら話を進めていきます。

そのように話をしていくことにより癒され、ほどけていくものもあれば、そうでないものも見えてきます。

カウンセリングだけではほどけないものに対して、

①考え方や捉え方などを共感的・受容的な態度で理解されつつ、修正や変容が起きるように進めていく

②実践的に行動で経験値を積み重ねる(順化という慣れの力もあなどれません)

③資源を活用する(周囲の協力や話せる人、支持してくれる人などを見出す)

④トラウマや恐怖反応、緊張反応などを心理療法によって緩和、軽減させる

⑤愛着形成に関する心理療法を行う

⑥ストレスに関する知識などの学ぶ心理教育

などのアプローチをクライエントに応じて行っていきます。

変化は「少しずつ自分のペースで地道に」と考えておいたほうが最終的な結果が良いことが多いです。

早く早くと焦ってしまうとどうにも遠回りしてしまう傾向があります。

以前までは見たくも聞きたくもなかった「自分の弱さ」が次第に「脅威」ではなくなり、そういう自分もいていいものだという「強さ」を持ち始めてくると感謝などが生まれてくることが多いです。

そのような状態になってくると人間は「不思議な強さ」を持ち始めます。

大切な自分の「弱さ」と向き合う場所として、こちらでは最善の形でお迎えし、最適な場を創っていきたいと思っております。

何より必要なのは「意志の力」です。

乗り越えたい、受け入れたいという「意志」さえあれば道は少しずつ開けていくように思います。


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記事監修
公認心理師 白石

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