この記事では「小学生の心理」に焦点を当てて記事を書いていこうと思います。

記載している心理状態や悩みはあくまで全体的・平均的な目安であり、発達や成長は人それぞれです。

ご理解の上にご覧ください。

小学生の心理発達と悩み


ひとくくりに小学生と言っても人によって異なるのが「心理」でもあります。

ですので一概にひとくくりにして書くことは難しいのですが、年齢的な心理的特徴や悩みなどを書くことによって少しでも理解に役立てられたらと思います。

またその時期に起こりがちな悩みについても書いていきたいと思います。

1.小学校低学年の心理と悩み 

小学校に入学して最初は不慣れなことが多く、緊張や不安を感じやすくなりますが、新しい環境に馴染むことが最も重要になります。

母子分離や自立心も人それぞれ特性があり、新しい環境に馴染みやすいお子様もいればそうでないお子様もいます。まずはここで悩みが出る場合とそうでない場合があります。ここは保護者が特にバックアップやフォローアップをしてあげて、少しでも気持ちを発散させてあげたり、心強い応援を行ってあげられるといいですね。

もし母子分離が難しい場合は、幼児のころより無理のない範囲で少しずつ距離を離しながら分離や一人でできたことを称賛し、報酬を与えることも大切になります。

うまくいかないことが続いたり、孤独で寂しい思いが強くなり、学校へいきたくないと不登校になるお子様もいます。ここで大事になるのが目標設定。親が友達を増やしなさい、もっと楽しくしなさいとプレッシャーをかけるとよくない場合もあります。プレッシャーが強い場合は、自分は自分で自分なりの楽しみ方をすればいいよ、友達はできたときにできればいいよ、と心理的緊張をほぐしてあげることもいいでしょう。

小学生になると着座をして授業を受ける時間が圧倒的に多くなります。多動特性が強い場合、じっとしていられない、動きたくなることも多いでしょう。最近では発達特性を理解しながら徐々にできるように促すスモールステップの考え方も教育に浸透してきています。(まだ理解がない場合もありますが)保護者は「少しずつでいいよ」と勇気付けてあげたり、思いっきり家で発散行動を促してあげることもいいでしょう。

学校でも家でも我慢することでうまくいっている特性のお子様であればいいのですが、そうでないお子様にとっては二重苦になります。

善悪の判断も幼児の頃より学ぶことが増えます。こういうときはだめ、いいといったことを体験しながら学んでいきます。ここではグレーな問題が課題になることがあります。基本的には嘘は付いてはいけないんだけど、こういうときは必要な嘘がある、といったグレーゾーンや柔軟な判断が必要になります。

またやってはいけないんだけどついついやってしまうことも多くあります。なぜならまだ感情や行動のコントロールがうまくいかないことがあるからです。少しずつ年齢的な成長と体験的な経験値から学んで行きます。発達障がいなどの影響がある場合は、特に感情や行動の統制が難しい方もいます。どうすれば理解できるか、理解できて行動するまでにどうすればいいか、その子にあった支援が必要になります。

時代的な問題としては、どうしてもゲームやYOUTUBEなど人の脳に快感を与える遊具が増えたために運動不足や自然体験の減少などが年々増加してきております。これは不可避な問題ではありますが、文部科学省も「自然や美しいものに感動する心などの育成(情操の涵養)」を低学年時に大切にしてほしいとしています。

学校ではもちろん行われていますが、家庭でも少しずつ自然や社会の中で感動できるものの機会を増やしてあげられるといいですね。

自分の気持ちがわかるようでわからなかったり、うまく伝えられないこともありますね。これは言葉の語彙や文章的理解も重要ですが、場数も大切になります。もしお子様が苦手であれば、家庭の中で言葉を使って遊んだり、楽しく伝えあう機会を増やすといいでしょう。集団や社会のルール、マナーを守ることを学び始める時期でもあります。

良いことと悪いことの理解は幼児のころから学んできており、家庭の中でも教えられてわかることが増えていきます。小学生になるとその理由、相手の気持ちなども広げて理解するようになっていきます。このあたりの共感性や他者理解、客観的思考も人それぞれの特性があります。なかなか相手の気持ちがわからない、というのは努力の問題もありますが、脳の特性上理解が難しい方もいます。そういった理解のもと、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などを活用していくことで、理解が促されることも多くあります。

小学校低学年時代では、損得勘定が優先的であったり、自己中心的な思考・行動が多くを占めていたり、一つの事柄に対して一面的な捉え方しかできないような時期でもあります。

客観的に物事をとらえる事ができるようになると思考や行動にも変化が出てきますが、多くの場合、高学年からこの能力が伸びるといわれています。

ですのでまだ客観視ができない状態であれば、自分の行動を制御したり、客観的に見て変化を加えることに難しさを感じる時期でもあります。

2.小学校中学年の心理と悩み

損得勘定が優先的で自己中心的な思考や行動が多い低学年と比べると少しずつ他者の考えを理解したり、他者からの評価を考えることも増えていきます。

逆に言うと他者からの目を気にしやすくなるのでその点の悩みが出始める時期でもあります。

ご家庭でどれほど自分の気持ちが言えるか、相談できるかがこれから重要になります。ぜひお子様が話しやすい雰囲気を作ってあげることが大切です。そのためには子供の視点に立って、「話しやすい」とはどういうことかを考えなければいけません。「だからこうしろっていったじゃない」「また?」といった言動によって、話すことをやめてしまうお子様もいます。また心配し過ぎる親に対しては、心配させてしまうからと大人の配慮を行う子供もいます。

低学年の頃よりは相手の気持ちがわかったり、感じることができるようになります。そのため一面的に捉えていた低学年時代とは異なり、ひとつの事柄に対してほかの側面の理解も広がっていきます。

結果や成果に注目が行きがちな低学年と比べると「なんであの子は。。。」と理由や動機などを考えられるようになっていきます。

しかし自分と相手は同じ考えだ、と思い込む単純的な思考もまだ残っていることもあります。

自己中心的な要素もありながら、他者や人の目を考えて行動するような時期になります。

この中学年では「ギャングエイジ」というキーワードが出てきます。

ギャングは想像する悪いことを生業にしている集団とは異なり「仲間」という意味で用いられています。(ややこしいですね)

この小学校3~4年生くらいになると、親離れが進み、同性や同年齢の仲間の集団で行動することが増えるためこのような名前が付けられています。

親や先生に反抗がちになったり、友人や仲間との結束が強くなっていくことによる問題も出てきます。

ある程度の反抗はさせてあげて、仲間の中での社会性をしっかり学ばせてあげると良いでしょう。日本は「親に対してなんてことを~」という精神が強く残っていることがあるため、なかなかここに難しさを感じる家庭もあるかもしれません。

このギャングエイジ反応は大切な成長過程でもありますので、子供の精神を育てるために必要なプロセスと捉えられるかが重要になります。しかし行き過ぎた反抗や未熟な思考から生まれる行動はある程度注意が必要かもしれません。

このギャングエイジ期があまりないお子様もいます。

一人のほうが好き。なかなかうまく入れない。肯定的なものもあれば、そうでないものもあります。

この辺りはご家庭の考え方もありますが、「なくてもいいんじゃないか」「そういう特性があっても世の中いいんじゃない」という考え方も増えていきます。

私もそういった考えも好きですね。

特性とは十人十色。無理して修正し過ぎて自分が分からなくなってしまうこともあります。

必要な努力もありますが、努力しないでいいところもあるかもしれませんね。

新たな芽を刈り取るのか、伸ばしていくのか、どれくらいがちょうどいいのでしょうね。

勉強面では「9歳の壁」というわれるように学ぶ教科が難しくなったり、増えていきます。

これは精神的負担や自信が揺らぐような時期でもあります。

頑張ったご褒美や精神的なサポートなどもご家庭でできることでしょう。

お子様の様子を見ながらちょうどよいサポートをしてあげてくださいね。

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褒める技術として、こういった記事もたくさんありますのでお時間があったらご参考に。

3.小学生高学年の心理と悩み

考える事や判断力もついてくるので大人びてくる時期ですね。

このころから客観視ができる能力も伸びていきます。

集団の規則の理解も進み、個人としての自分と同時に集団の中での自分という枠組みを少しずつ獲得していきます。

ですので集団の中での自分の役割と責務を少しずつ学んでいきます。

相手の置かれている状況や気持ちを考えることができるようになってくるので「思いやり行動」も増えていきます。そうして自律的な判断や行動が増え、責任感も強くなっていきますが、批判的意識も同時に強くなります。

ルールを守らないことへの批判も強くなりすぎてしまうことがありますね。

一つの事柄に対して道徳的な側面も理解した多角的な見方ができるようになっていきます。しかしこのあたりは人によって大きく差異があります。

この時期になると発達状態が人によって大きく異なっていることもあり、男性性や女性性など性に対しての成長が大きくなる時期です。

悩みの種類も増えてくる時期で、他者の目や他者との問題に関しての問題も増えてきます。

悩み自体は悪いものではないものもありますので、自分の乗り越えられないものは家族や友人の助けが必要になるかもしれません。必要に応じてカウンセリングや心理相談が効果的な場合もあります。

反抗期も起こりやすい時期ではありますが、「自我意識の芽生えという過程」と捉える気持ちも大切です。

性に対しての教育も必要になってくる場合があります。

文部科学省は、

  • 抽象的な思考への適応や他者の視点に対する理解
  •  自己肯定感の育成
  • 自他の尊重の意識や他者への思いやりなどの涵養
  • 集団における役割の自覚や主体的な責任意識の育成
  • 体験活動の実施など実社会 への興味・関心を持つきっかけづくり

の5項目に関して高学年で重視すべき課題として公表しています。

小学生と不登校


2023年の調査では、小中学校における不登校児童生徒数が前年度24万人を超えて約29万人となり、前年度比で約22%増加し、約30万人になったと文部科学省より公表されました。

すごく増えてきてますね。

下の図を見ていただくとわかりやすいのですが、ここ数年でまたぐっと増えてきています。

出典「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

年代別にみてみると階段状に年齢が上がっていくたびに不登校が増えていることがわかります。

図3:学年別不登校児童生徒数の推移

図3:学年別不登校児童生徒数の推移(小中学生の不登校は過去最多の約30万人に──数字だけを見て終わりにせず、教師や保護者ができることは? (1/3)|EdTechZine(エドテックジン)

不登校になる原因は、

  • 怒られる(怒られることの耐性も含めて)
  • 親との分離不安
  • 人間関係の悩み
  • いじめ
  • 環境になじめない
  • 苦手教科や嫌なことが多い
  • 勉強についていけない
  • 無気力・行く意味を見つけられない
  • 発達障がいや知的障がい(境界知能)
  • ゲームやYOUTUBE問題や中毒
  • 病気
  • 昼夜逆転生活
  • 愛着障害
  • 本人の特性や個性として
  • 自分の気持ちや行動のコントロールができない
  • 傷つきやすさ

などが挙げられています。

原因は一つとは限らず、複数関連している場合があります。

ご家庭でできること、学校側でできる事、心理師の介入、環境設定、教育設定、いろいろな連携が必要になります。

一人で悩まず、社会全体で協力することが大切です。

「学校に行くことだけが重要」といった考え方も変化してきています。

ほぼ多くの方は、将来社会に出て、仕事をして健やかに幸せに暮らすために私たちは下段階の教育を受けるのだと思います。

であれば将来健やかで幸せに働き暮らせるようにできればいいのであって、そのために別ルートであっても可能であるという考え方も増えてきています。

もちろん学校に再度行くことももちろんその方向につながっていきます。

多様な個性がでてきたなかで、多様なルートがあってもいいのではないか?という模索時代と捉えれば、当たり前の反応なのかもしれません。

学校の中に多様な教育の仕組みが求められていることもあるかもしれません。

いろいろな方向性を模索してお子様に「ちょうどよい」ところを探したり、心のなかの「ちょうどよい」感じができてくると良いのでしょうね。

そのためにはご家族の協力なしで行うことができないかもしれません。

発達心理学から考える小学生の心理と悩み

心理学の学術的な世界から「小学生の心理と悩み」をみてみるとまた違った捉え方ができますのでご紹介します。

少し長くなりますが、興味があるところをご覧いただければと思います。

①エリクソンの心理社会的発達理論

エリクソンは人間の一生を8つの段階に分けた「心理社会的発達理論」を提唱しています。

第一段階の生後は、欲求が満たされないでいると不信感が発達しやすくなってしまいます。

第二段階の18ヶ月から2歳までは、恥じらいや疑惑の感情に直面することが増え、意志の問題が発達しやすくなります。

第三段階の3~6歳までは、目的を持つために積極性や罪悪感に直面し、懲罰によっては恐怖症や罪悪感を強く覚える時期です。

第四段階の6~12歳は、学習が増え、勤勉性と劣等感を感じやすく、想像力が減少したり、活発でなくなってしまうような発達が行われてしまう可能性のある時期です。

第五段階の13~17歳では、自分が誰なのか、何をしていきたいのかという自我を確立していこうとする時期であり、後に後述する「アイデンティティ・クライシス」が起き易い特徴があります。

第六段階の18~30歳は、親密な人間関係や愛を学ぶ時期であり、孤独を感じ、引きこもりになってしまう可能性がある時期です。

年齢時期導かれる要素心理的課題主な関係性存在しうる質問関連する精神病理
5歳-学童期有能感勤勉性 vs. 劣等感地域、学校人々とものの存在する世界で自己成就できるか?学校、スポーツ創造的制止、不活発

勉強が増えてくる小学生の時期では、劣等感を感じやすくなったり、活発性が薄れたりすることがあります。できることに注目しながら自分なりの有能感覚を育てる事が大切になります。

②コールバーグの道徳性発達理論

コールバーグの考えでは、道徳性は幼年期と思春期を通じて徐々に発達すると言います。

3年ごとに20年間、72人の少年に対し、どちらを選んでも満足できないような質問をする調査を行いました。

その回答をもとに発達は6段階を通して発展していくと理論づけました。

■慣習以前のレベル(9歳までの期間)
①服従と懲罰の段階(善悪を懲罰や服従で考える段階)
②個人主義と交換の段階(善悪を報酬や利益によって考える段階)
■慣習的レベル(思春期から青年期にかけて)
③喜びと「良い子」の段階(助けや喜びなど良い子であるかどうかで考える段階)
④法と秩序の段階(権威の尊重や法への服従、社会的側面を考える段階)

■脱慣習的レベル(協調を超える段階で全体の10〜15%の人が到達する)
⑤社会契約と個人の権利の段階(規則も大事であるが生命の尊さに気づく段階)
⑥普遍的倫理観原理の段階(万人を尊重する段階)

コールバーグは、このように発達の発展を考え、子供は他者との関わりと相互作用を通じて尊敬や共感、愛に気づくことで道徳性を発達させると語っています。

③ピアジェの認知発達理論

ピアジェは認知発達における研究を幅広く行い、多くの功績を残したことから「発達心理学」の父と呼ばれています。

ピアジェは子供の成長につれてどのように知能が発達するのかという「発生的認識論」について関心を持ち、研究を行っていきます。

子供は能動的で自立した学び手であり、教師はその子供が自分で創造性や想像力を発揮できるように指示することが大切であると考えました。

ここでいう「能動的」とは、試した、やってみたい、動きたい、マスターしたいという自然な欲求から学習が行われることを指します。

研究を行っていくと、子供にはその年代に応じた思考法があることを提唱し、その見解は大人のミニチュアであるという当時の見解を覆すものでした。

発達には段階があり、まず最初は、「感覚運動期(0〜2歳)」から始まります。

この時期は自分の観点から自己中心的にしか見えない時期であり、感覚と運動が「表象(イメージ)」を介さずに結びつき、反射的な行為が多いものです。

見えなくなっても存在できると理解できる「対象の永続性」、繰り返し行動の「循環反応」、真似をして学ぶ「模倣行動」などが特徴的です。

この時期に目の前にはない対象をイメージしたり、行為の前に思考するようになってくると次の段階である「前操作期(2〜7歳)」に入ります。

この時期では、同じように自己中心性が強い時期ですが、思考に比較や検討ができる論理性が備わってきます。

またあらゆるものに命が宿っていると考える「アミニズム」、想像と現実が区別できない「リアリズム」、自然なものでも人間が作ったと思ってしまう「人工論」などが特徴的です。

前半の2〜4歳は目の前になくてもイメージをして行為を行えるため「象徴的思考期」と呼ばれ、後半の4〜7歳は理性によって考えられるようになるため「直感的思考期」と呼びます。

次の「具体的操作期(7〜12歳)」では、数や量の保存概念が成立して情報処理を頭の中で行えるようになり、自己中心性から相対的な観点が備わってきます。

そして「形式的操作期(12歳以降)」では、抽象的な概念を操れるようになるため推論や推測、仮説に基づいた思考ができるようになります。

観察から得られたものではなく想定したものから判断して結論づける「形式的演繹」なども特徴的です。

④ヴィゴツキーの発達理論とZPD

子供は母親や社会的な関わりの中で精神間機能を内化させ、転化させることで思考ができるようになるとヴィゴツキーは考えました。

要するに私たちの人格や人となりは他者との関わりで形成され、知識や経験を「道具」として活用し、自分のものにしていくのです。

子供に同じように教え、援助していても発達水準に違いがあり、この差異を「発達の最近接領域(ZPD)」が異なると表現しました。

もう少し詳しく説明すると、学習者がすでに学習している領域を「実際の発達領域(ZAD)」といい、教師や他の助けがあれば理解できる領域をZPDと言います。

当初は教えてもらわなければわからなかったこと(ZPD)の学習が進み、自分一人でできるようになる(ZAD)ことが発達であり、そのことを理解した上で教育者は教育に当たることが望ましいとしました。

私たちは他者を通じて自分自身になるレフ・ヴィゴツキー(Lev Vygotsky)

⑤ウィニコットの発達による攻撃性の変容・憎しみへの寛容さ・母親と一人でいられる力

ウィニコットは、「攻撃性(aggression)」は、愛の原初的な一部であるとし、活動性の起源と同義であると考えました。

攻撃性は、自我の初期の段階では思いやりのない状態であるが、思いやりのあるものへと変わる中で罪を感じ、最終的には葛藤をする形へと変わっていくとしました。

健康な幼児は罪を抱えることができ、母親の助けを借りて「修復」することができます。

養子になった子供は、愛されるだけでは不十分なことも多く、憎まれていることを実感した後でしか愛されていると信じることができないとウィニコットはいいます。

苦しみを深く味わった子供は、拒絶されたり無視されたり、捨てられた過去の投影があり、憎悪と憎まれる欲求を深く持つことが多いと言及しています。

両親は子供の憎悪を受け入れることが大切であり、自分の中に出てくる憎悪に対しても承認していかなくてはなりません。

これは養子に限ったことではなく、一般の家庭でも同様に考えるべきで、多くの場合母親が先に子に対して「憎悪」の感情を持つと言及しました。

また精神分析を行なっている時にこの憎悪が治療者に向かう「転移」があったり、逆に治療者側が患者側に憎悪が向かう「逆転移」がしばしば起こります。

「憎しみに寛容になること」とその寛容さが親子でできることは心理的にも発達的にも良い影響がもたらされるように感じます。

ほどよい母親(good enough mother)とは、幼児の依存に対して適度な関わり合いや提供を行うことでその子供の万能感を育て、現実を認識しやすくなります。

妊娠の終わりから出産後週数間に乳児の母親への同化と依存状態を「母性的没頭」と呼び、この時期の記憶は思い出すことが難しく、抑圧されるため非常に重要であると考えました。

冷たい態度や関心を向けられない場合だけではなく、過剰に幼児に没頭してしまうことも問題となることが多いとしました。

そしてその時期に問題があれば「原初的不安」が出やすくなってしまいます。

情緒発達の成熟度として「独りでいられる能力(capacity to be alone)が重要な指標であるとウィニコットは提唱しました。

母親を自分に内在化する経験によって、母親がいなくても独りでいられる能力が育っていきます。

そのためには「母親と一緒にいながら独りであるという体験をする」ことです。

また自分の内的世界に良い対象がいることが重要であり、そこに不安な対象があると独りでいることが困難になってしまいます。

6ヶ月から1歳前後までの期間にて見られる、母親との分離などの状況で母親やその乳房の代理として愛着を持つ毛布やタオル、ぬいぐるみなどの対象のことを「移行対象(transitional object)」と呼び、その現象を「移行現象」(transitionalphenomena)としました。

ウィニコットによればこうした対象が「自分は万能ではない」という現実を受け入れるプロセスとなり、母子未分化から分化していく状態へと促すとしています。

これはある意味「錯覚」のようなものであり、大人でいうと芸術や宗教の中に備わっていることも多く、嗜好や癖、依存しているもの(addiction)なども関係が深いと考えられます。

幼児のニーズに対してほどよい母親であれば、自分の想像する能力に対応する外的現実があるのだという「錯覚」を幼児が持つことができるとウィニコットは言及しています。

おわりに


ある調査では、保健室に行く子供の約4割はなにかしらの心理的問題を抱えているという話があります。

「まだ子供だから」と捉えることも多いですが、そうでないところもたくさんあります。

論文「小学生の学校生活における心理社会的ストレスと心理教育的アプローチ(岡﨑由美子・安藤美華代著)」など小学校5,6年生2,486名を対象とした研究発表について一部をご紹介します。

その調査では、ストレス反応の一位が「つかれやすい(63.5%)」というのが意外でしたね。2位はいらいらする(60.6%)でした。

多くのストレスは学習に関することと友達との問題のようですね。特に勉強がよくわからないことに対するストレスは上がってきているようです。

「無視された」「仲間はずれにされた」といった態様を含む「いじめをうけた」経験者率が38~52%であった(文部科学省,1996;教育基本調査,2006)。一方,今回の調査では,50%の児童が「友達にいやなあだ名や悪口を言われた」,45.8%が「友達に無視された」,22.7%が「友達に仲間はずれにされた」といった経験をしており,

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/19998/20160528004146676712/010_011_020.pdf

小学生の間で約3割~半分の子供は人間関係で嫌な思いをしているのが普通となっている感じですね。

(これは捉え方やストレスの程度、傷つきやすさなども含めて本人がどれほどのストレスを抱えているかは違いがあります。)

ストレスの対処法の経験としては、

1位 友達に話す(81.8%)

2位 友達と遊ぶ(77.4%)

3位 考えないようにする(70.2%)

4位 ほかのことに集中する(66.4%)

といった対処法を半年の間で経験している人が多かったそうな。

こういった論文からも小学生のストレスや対処法なども理解できますのでインターネットなどで検索してみるといいですね。

またカウンセリングや心理療法も幼児のころと比べると可能なアプローチも増えていき、効果的な反応も期待できる年代になっていきます。

小学生のころから心理的な教育介入をすることによる良い影響もでている研究もあります。

その時代にあった、そのお子様にあった、教育が提供されていくといいですね。

小学生の心理や発達の理解に少しでもお役に立てられたら幸いです。

記事監修
公認心理師 白石

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