心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではハンス・J・アイゼンク「アイゼンクの人格モデル」「天才と狂気」について書いていきたいと思います。
ハンス・J・アイゼンクについて
ハンス・J・アイゼンク(Hans Jurgen Eysenck)は1916年ドイツのベルリンの映画女優の母と舞台役者の父のもとに生まれます。
しかし両親はすぐに離婚し、母方の祖母に育てられます。
ベルリン大学で学ぶにはナチスに入党する必要があるため、イギリスへ渡り、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンへ入学し、心理学の博士号を取得します。
1938年に結婚し、キングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所に勤め、その後はキングス・カレッジ・ロンドンで教壇に立ちます。
ロンドン大学で心理学研究所を創設し、所長も務めています。
1950年に再婚し、正式にイギリス市民となり、1997年に亡くなるまで数多くの研究と著書を残しました。
主著には、
1967年「人格の構造ーその生物学的基礎」
1976年「人格の一次元としての精神病」
1983年「創造性の根」
などがあります。
アイゼンクの人格モデル
人格の特性を定義しようと多くの心理学者が試みてきましたが、アイゼンクの関心は細部の特徴よりも人間の気質自体にありました。
ガレノスの提唱した「四大気質(多血質・胆汁質・粘液質・黒胆汁質(憂鬱質))を参考にして「アイゼンクの人格モデル」として気質を定義する円状のパラダイムを提示しています。
このモデルは、
①内向的
②外向的
③情動的安定性(情緒安定)
④神経症傾向(情緒不安定)
の4つ因子をガレノスの4大気質に加えました。
神経症傾向は、共感神経システムを動かす閾値が低いが、闘争ないし飛躍反応をする脳の部位に異常な活発をする特徴があり、些細な脅威であっても過剰な反応を示してしまいます。
内向的とは、人見知りで物静かである特徴とともに脳は絶えず興奮に満ちていて落ち着きがないとアイゼンクは言います。
外向的は、社交的で話好きである特徴と退屈な気分を感じやすく、刺激を求めていることが多いと言います。
これらの人格的特性が相互に相関し合いながら精神病傾向を生み出すとアイゼンクは見出しました。
天才と狂気
アイゼンク尺度と呼ばれるテストで高い得点を出すものは多くの場合、
・攻撃的
・自己中心的
・非人格的で衝動的
・反社会的で協調性がない
・創造的で強い意志
を示しました。
高得点を出すものが必ずしも精神病を病んでいるという意味ではありませんが、傾向を出すことに関してのちの研究などにも大きな影響を与えています。
またアイゼンクは、精神病とは認められない場合の精神病傾向は、その人の創造性やオリジナリティを潜在的状態から現実世界へ移し替えることが重要であると主張します。
包括的思考(幅広く考えられる能力)は独創的で創造的な観念やアイデアを生みます。
それが過度になって高い知能(IQ165以上)と結びつくと「天才」へと通じることが多く、精神病傾向と結びつくと「狂気」へ繋がってしまうとアイゼンクは主張しました。
そしてこのような名言を残しています。
狂気は天才と紙一重だ
ハンス・J・アイゼンク
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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