過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学の哲学的ルーツの一人であるスタンレー・ホールと「青年期」について書いていきたいと思います。

スタンレー・ホールについて


グランヴィル・スタンレー・ホール

グランヴィル・スタンレー・ホール(英語:Granville Stanley Hall)は、1844年にアメリカのマサチューセッツ州の農家に生まれました。

ウィリアム大学を卒業後、遊学計画が資金不足で頓挫し、母親の願いに従って1年間ニューヨークで神学を学びます。

その後、ハーバード大学のウィリアム・ジェイムズの下でアメリカ初の心理学の博士号を取得し、ドイツのライプツィヒ大学のヴェルヘルム・ヴントの下で教わりながら研究を行います。

帰国後、ジョンズ・ホプキンス大学の教授となり、アメリカで最初の実験心理学の研究室を創設し、アメリカ心理学学会の初代会長に就任しました。

迫害されていたユダヤ系の精神分析の大家たちをアメリカに招き、教育心理学・児童心理学・青年心理学などの様々な分野の心理学がアメリカの地で育っていく礎を築きました。

主著には、

1904年「青年期」
1906年「若者–その教育・組織化・衛星」
1911年「教育の問題」
1922年「初老期」

などがあります。

青年期とは新たな誕生だ


ホールの学問的探求で有名な功績として「青年期」の研究があります。

この時代までは、幼年期が終われば18歳で成年期になるという理解しかなされていなかったような時代で、ホールは子供には「児童期」と「青年期」の2つの区分があることを指摘します。

ホールはダーウィンの進化論に影響を受け、人間の発達は環境と進化論的な「先祖の経歴」の反復を取るような形で成長すると考えました。

青年期は、

・情動的な混乱と反抗の顕著な時期
・強力な感情と新しい感覚を求めてやまない
・単調さ、月並み、細かいことは我慢ならない
・自己認識と行動環境が日増しに拡大する
・ふさぎがちになる傾向が強くなる(11歳から始まり15歳でピークになり、23歳くらいまでに下降してくる)
・嫌われているのではないかという疑念や幻想を抱きやすい
・自己批判と詮索的な態度へ繋がりやすい
・危機的な行動は18歳頃がピークとなりやすい

などの特徴を表すことが多いことを報告しています。

「青年期とは、人間の魂のうちにある最悪の衝動と最高の衝動が互いの掌握を目指して争う時期であり、より高度でより一層複雑な人間的特徴が生まれる新しい誕生だ。」と語っています。

12〜16歳の青年期前期は新しいエネルギーを受け取る重要な「2回目の誕生」であり、青年期は24、5歳まで続くと考えました。

ホールの「子ども観」は、「子どもとは、カルヴィンが考えた生得的に堕落した存在でもなく、またワーズワース的な天国から栄光の雲をたなびかせている小さな神性一完全に純粋で善としての存在― でもない。」と語っています。

この時代には子供の意志を押さえつけたり、むち打ちや強制的な学習など権威主義的な教育が多かった時代に「子供のために学校があり、学校のために子供がいるのではない。子供と青年期に応じた柔軟性と従属がなければならない」とホールは指摘しています。

ホールは、心理学分野だけでなく、教育分野でも大きな功績と提唱を残しています。

のちの人間発達の研究では、マーガレット・ミードが「青年期が人間の中で発達したのは西洋世界においてのみである」と主張し、エリク・エリクソンは青年期のアイデンティティのの役割の混乱を「アイデンティティ・クライシス」と命名し、デレク・フリーマンは「青年期は社会的に構成された概念である」と主張しました。


参考文献

子どもの発見―G・スタンレー・ホールの「児童研究 」をめぐって 朝日 由紀子

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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