過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではR・D・レインと「反精神医学」について書いていきたいと思います。
R・D・レインについて
ロナルド・ディヴィッド・レイン(Ronald David Laing)は1927年スコットランドのグラスゴーの裕福な家庭に生まれました。
サンタクロースの正体が両親であったことに失望し、肉体的パニックになるほどの精神的特徴があったようです。
レインは、厳格なイギリス式家庭環境で育ち、グラスゴー大学で医学を学び、精神科医となります。(精神分析の対象関係学派であるドナルド・ウィニコットから訓練を受けました。)
治療と研究を続けていく中で既存の精神医学に疑問を抱くようになります。
私財を投じて医者と患者が共同住居に住む「新たな治療共同体」を建設することやクーパーとともに現象学研究所などの研究所を設立しました。
そして「反精神医学」を提唱していきます。
反論された精神医学会はその提唱を受け入れることは出来ず、レインは評判も損なうことも多かったようです。
しかしその信念は「家族療法」などの心理療法や理論の中に取り入れられ、今でもその信念は引き継がれています。
主著には、
1960年「引き裂かれた自己」
1961年「自己と他者」
1964年「狂気と家族」
1967年「経験と政治学」
などがあります。
反精神医学
精神分裂病(現:統合失調症)には確たる生物学的な原因を指摘することは出来ない、たいてい他者との関わり合いの中で起こることであり、自分が自分を歪曲させているのではないとレインは考えました。
精神医学は精神疾患を病気扱いしてきましたが、それは社会的に適合しないだけであって、全て解体されて治療されるものであるとは限らず、それ自体が突破につながる場合もあるとしました。
このような見解は業界からはほぼ受け入れられなかったもののクーパーやサルトル、ドゥルーズ、ガタリ、フーコーらは賛意を示しました。
レインに言わせれば「薬は思考能力をも麻痺させ、真の回復力に繋がらない」と主張し、薬の問題性も提起しました。
グレゴリー・ベイトソンの両立し難い期待に対する矛盾である「ダブルバインド理論」によって精神障害に至るとレインも支持を示しています。
人は自然な状態であることが健全であり、精神疾患はそれを復元しようとする企てであるという信念をレインは持っていました。
精神疾患の患者側の問題よりも社会がそれを受け入れられないところに問題があるとして、隔離せず、社会の中で関わりを持って治療すべきだとして治療共同体を創設しました。
レインの提唱は精神障害や精神疾患の方々への配慮や尊重につながり、その影響は今にも影響をもたらしています。
最後に著書「自己と他者」での名言を紹介します。
自分自身と他者にとって意味のあるものとして経験しえないがゆえに彼は、自分で他者の世界の中に妄想的に意味のある場所を作り上げる
ロナルド・ディヴィッド・レイン(Ronald David Laing)
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
自己と他者 ロナルド・ディヴィッド・レイン
記事監修
公認心理師 白石
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