過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではメルヴィン・ラーナーと「公正世界仮説」について書いていきたいと思います。
メルヴィン・ラーナーについて
メルヴィン・ラーナー(Melvin Lerner)は1929年アメリカのオハイオ州ロレインに生まれます。
ニューヨーク大学で社会心理学の博士号を取得し、スタンフォード大学で臨床心理学の博士号を取得します。
カナダのウォータールー大学で教壇に立ちながら研究を行い、正義の信念と「公正世界仮説」を提唱し、様々な国で評価と賞を受けております。
主著には、
1980年「公正な世界への信念ー根本的妄想」
1981年「社会行動における公正な動機」
1996年「社会的正義に関する近年の問題」
などがあります。
ラーナーは「正義の心理学研究のパイオニア」として称されています。
公正世界仮説(誤謬)
公正世界仮説(just-world hypothesis)とは、公正な世界において全ての正義は報われ、全ての罪は罰せられると考える認知バイアスです。
自分にふさわしいものを手に入れていると信じたい人間にとって、この公正世界信念は心地よい合理性を与えてくれますが、実際はその通りでないことも多くあります。
多くの宗教やスピリチュアル思想の根幹になっている信念ですが、ここにラーナーは社会心理学者で初めて着目していきました。
このような公正世界信念を持つことは自分の幸福にとって重要である一方で、不公正名現実を受け容れる余地に問題が出る可能性を秘めているとラーナーは言います。
ラーナーの研究では、宝くじに当たった人は努力家もしくは善行を行ったものという認識が周囲に芽生える結果がでましたが、虐待やレイプに対する認識は非難的で、他者を非難することによって自分自身の安心感を保護しているようでした。
公正世界信念を持つことによってポジティブな心理状態を維持できる反面、非難的な側面も併せ持つ可能性があるということです。
また良いことをしたから良いことが起きるという解釈ですが、よくないことが起きた時に精神的苦痛を感じやすく、「よくないことが起きたということは何か悪いことをしたのではないか?」という疑問で自責してしまうこともあります。
この公正世界仮説は小さい頃の教育でよく用いられることが多く、いつの間にか刷り込まれていることも多いとされています。
それが自分の人生にとって有益で有用であればいいのですが、自責の多い方はこの信念が過剰に働いていないか?を疑ってみると良いかもしれません。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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