新型コロナウイルスで最も危惧されている「重症化」。

「重症化するのではないか?」という強い不安や恐怖はなかなか当事者でなければわかりません。

その強い不安、恐怖に対して心理職を行うものとして出来る限りのサポートを行っております。

ここでは恐怖や不安を強くしてしまう方もいらっしゃいますので「重症化」についての情報はあえて省きます。

重症化リスクの報道がある中で


2021年1月現在、新型コロナウイルス感染後の重症化リスクについて多くの報道で取り上げられています。

情報があることによって私たちは理解することができ、その特性を知り、何に配慮すればいいかを精査することができます

それはとても重要なことなのですが、情報にとらわれすぎたり、不安や恐怖が非常に強くなてしまうこともあります。

日本という国は、「人様に迷惑をかけないように」という意識が高く、危機意識も非常に高い国民性を持っていると言われています。

そのためメディアでの情報はリスク寄りの報道が多いかもしれません。

それが功を奏しているという意見も多くありますが、私たちが自分自身でバランスよく情報の活用をしていくためには少し工夫が必要な場合もあります。

「重症化するのではないか」という不安と恐怖


「重症化するのではないか」という不安と恐怖を強く持っておられる状況の方々がいらっしゃいます。

・自分や家族、周囲にリスクの高い方がいる状況
・今現在、新型コロナウイルスに感染している状況
・感染しているかどうかわからないけど何かしらの症状がある状況
・不安症や恐怖症、神経症、病気不安症傾向が強い特徴をお持ちの状況
・理由がわからないが、不安や恐怖が強くなっている状況
・基礎疾患、免疫の問題、炎症の問題などをお持ちの状況
・多くの人と接する機会や仕事をお持ちの状況
・報道される危険性に自分や周囲が該当する可能性がある場合

身体的に感染リスクが高い場合もあれば、心理的影響でその感情が高まっている場合もあり、それらが複雑に絡み合った場合もあると思います。

当人の心と体と状況になってみないとそのお気持ちを本当に察することはできません。

このコロナ禍で独り心の中で悩み苦しみ、戦っている方も多くいらっしゃると思います。

時に周囲の方に理解されず、そのストレスも相まって苦悩されていることもあります。

そのような方々に少しでも役に立てるように心理職としてサポートを行いたいという思いでこの記事を書き、カウンセリングセッションを行なっております。

人によって心や体、状況が異なりますので、「これが正しい」といった一括りにすることはできません。

その方がより良い状態になるように個別に応じた最善策を見つけていくことが大切だと感じております。

不安と恐怖の感情について理解する


一般的に緊急事態で目の前に迫っている時には、わたしたちは「恐怖」を感じ、未来や脅威がそれよりも遠い場合には、「不安」を感じます。

医学的には、具体的な対象がない漠然とした恐れを「不安」、具体的な対象がある恐れを「恐怖」と定義しています。

なぜわたしたちは恐怖や不安を感じたりするのでしょうか?

それには人体の仕組みを知ることが必要になります。

今でこそ戦争や獣に襲われる危険性がなくなったものの、人類の歴史から言えばそういった危険性とともに歩んできた歴史があります。

動物でも同様のことが言えますが、命を守ることを最重要選択として自分を守る「自己防衛本能」が体には備わっています。

恐怖を感じると「戦うか」「逃げるか」「フリーズするか」という反応が自動的に現れます。

※フリーズは、体を硬直させ獣などの脅威から気を悟られないようにする反応です。

脅威から離れ、恐怖が遠くなると「不安」という感情を用いて対象を避けたり、リスクを考えることに専念するのです。

恐怖や不安によって慎重になることで命を落とす確率を下げてきたのです。

そうやって代々受け継がれてきた命の結晶がわたしたちです。

日本人に多い不安遺伝子

住んでいる地域の特性や人種によって特徴的な遺伝情報が異なります。

日本人にも心的・性格的に特徴的な要素があります。

ここでは不安遺伝子と呼ばれる「セロトニントランスポーター遺伝子」について説明していきます。

セロトニントランスポーター遺伝子には「SS型」「SL型」「LL型」の3種類があります。

「SS型」に近いほど不安や恐怖などの悲観的(ネガティブ)になりやすく、「LL型」に近くなるほど安心などの楽観的(ポジティブ)になると言われています。

○S遺伝子だけもつSSタイプ
日本 68.2%
アメリカ 18.8%
○S遺伝子とL遺伝子をもつSLタイプ
日本 30.1%
アメリカ 48.9%
○L遺伝子だけをもつLLタイプ
日本 1.7%
アメリカ 32.3%

クラウス-ピーター・レッシュ「サイエンス」1996 中村敏昭「アメリカン・ジャーナル・オブ・メディカル・ジェネディスク」1997

「SS型」68.2%、「SL型」30.1%という結果から、日本人のほぼすべての人が不安や恐怖などの悲観的(ネガティブ)になりやすい傾向を持つということが遺伝子から分かっています。

セロトニンに関係してる遺伝子という限定的な見解ではありますが、日本人の不安や恐怖、悲観的な特徴はこういったところから説明が付きます。

不安がでやすい、不安をよく用いてきた民族であることを遺伝子が物語っています。

戦や山賊、海賊、切腹といった人為的な脅威、地震や洪水、台風などの自然の脅威が多い日本では、不安や恐怖のアンテナを強くしておかなければ生き残ることが難しかったのかもしれません。

「恐怖−過敏−不安」システム

恐怖を感じ、恐怖を学習すると神経は高ぶります。

要するに過敏になるということです。

ですので通常よりも不安もたくさんでてくるものです。

また不安によって強迫的傾向が強まることも少なくありません。

このような人体の防衛の仕組みを知らないことによって、「なんで自分はこんなに怖がったり、不安が強いんだろう?」「なんでこんなに神経質になったんだろう?」と疑問を自分に投げかけ、その責任の所在を自分の心的弱さにしてしまいます

そうすることによって自責し、ますます自分を弱め、より恐怖が強く感じるようになり、より過敏に、より不安になっていく負のスパイラルに巻き込んでしまいます。

ですのでこういった仕組みがあることを知ることがまずは大切になります。

自分を批判しないことから始める

不安と恐怖が強くなっている自分を責めたり、批判することがある場合もあるためにこのような情報を書いていきました。

人にはそれぞれ特徴があります。

自分の力を弱めることはできる限り少なくしていくことが良い策である場合も多くあります。

みんな「自分の正しいと思うこと」を発信していることが多くあります。

それが活かせる場合もあれば、参考にならないこともあります。

あくまで自分自身が良い状態を作ることが大切になることが多くあると思います。

自分をより良い状態にしていく


現在コロナウイルスに感染し、治癒を待っている状況で緊迫した不安や恐怖を感じている場合もあれば、感染していない状態での強い不安や恐怖を感じている場合もあります。

本当に状況によって異なりますが、今の自分に「より良い状態」を作るために何ができるか?という考えは、今現在に考えられる、行える状況下での話になります。

・できるだけ悩みを減らす(頭を休ませる)
・できるだけ食べすぎないようにする(体を休ませる)
・できるだけバランスの良い食事を行う
・できるだけストレスを減らす(必要のない炎症は減らす)
・できるだけ適度な運動を行う
・できるだけ太陽に当たる時間をつくる(多すぎてもよくない)
・できるだけ良い状態の心理状態をつくる
・できるだけ良い状態の身体にする
・できるだけ質の良い睡眠状態をつくる
・できるだけバランスの良い情報の捉え方を行う
・できるだけ感染・重症化しないような行動や工夫をする
・できるだけ不必要な洗脳や暗示を自分に行わない
・できるだけ自分の元気につながることを行う
・できるだけ自分や他人を責めることに力と時間を使わない

といったことが考えられます。

今できることを「できるだけ」増やしていくことで、より良い状態が少しずつ増えていきます。

しかしこのようなことも考えられないぐらい強い恐怖と不安に悩まされることもあります。

強い恐怖や不安に対するカウンセリング


どのくらい怖がり、どのくらい不安であることがいいのかは人によって異なります。

恐怖や不安も使い方、見出し方次第で有効に活かせることもあります。

自分でどうにもならないような強い恐怖や不安に対して、自分のペースで話しながら少しでも解消やその理由、理解に努めていくことが功を奏すことがあります。

何が恐怖なのか?何がそのような強い不安を感じている理由なのか?などの理由や原因が分かることで少し安心できることもあります。

それらの感情をどのように扱えばいいのかは人によって異なります。

自分に最善な捉え方をしていくことも有用ですので、その捉え方を一緒に考えていくことも行なったりします。

周囲の協力も必要な場合、そのようになるように働きかけが必要な場合もあります。

感情や悩みに時間と労力を取られている場合、どれくらい労力をかけるべきか?その他への労力や時間の掛け方、何を優先すべきか?などについても話していくことによって見えてくることも多いかもしれません。

しかしそれは感情に振り回されなくなってできることでもあります。

相談されるクライエントの感情や思いに寄り添いながら、その方の意志を尊重し、適切な形へと向かっていくようにカウンセリングを行なっていきます。

一番大切なのは「感染しない」「重症化しない」ことであることが多いと思いますので、何をすべきで、何をしないほうがいいかを改めて検討してみることも大切であったりします。

このような事態は私たちが経験したことがないような状況です。

「自分ができることをしていく」ことしかできません。

できるだけみんなで、できる限りの協力と尊重を行いながら乗り越えていきたいものです。

わたしもできる限りの協力をしていきたいと思います。


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記事監修
公認心理師 白石

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